第3話  令嬢カミングアウト

どうしてこうなった・・・。

そうだ、そうだったなモエツイのあの一言だ。

昨日クラスで俺は公開処刑をしたんだけど、高揚感と疑問が残った。ついにゲットとしたぜリアルギャルゲーをとこれが本当に俺の求めている理想なのか否か?という2つの思考が残った。

 あの騒動以降、俺は廊下を歩く度にみんなからの視線が痛い。どうやらこの騒動は学校全体まで広がっているようだ。「ううっ・・・これが時の人って奴なのか。平穏に頼むぜ。」と思いながら俺の教室である3年4組に向かった。入る際には警戒しながら空気の様にサッと入り自分の席で寝ようと頭の中で考え、実行に移そうと思った矢先に「ハイジン氏ぃぃぃ! 何故、何故でござるか!?抜け駆けはゆるさぬでござるよーー!!!(泣)」。そう・・・ゴロ氏が俺をめがけて後ろから走ってきたのだ。俺とモエツイの関係は騒動時に説明したにも関わらずまだ説明を求めようとしているのだ。当然俺はマズイと思いどうにかしなかればと切羽詰まり、とりあえず走って巻こうかなという結論に至ったのだ。行く当てもなく校舎の廊下を走っていた際に「こっちですわよ~!」と俺に対してへの呼びかけが聞こえた。信頼できるかわからない呼びかけだが他に逃げるあてもない為、俺はその誘いに乗ることにした。

 呼びかけに乗った結果、理科室へと入った。どうやらゴロ氏を巻いたようで少し安堵した。そして俺に呼びかけの声を発したのは誰なのかという不安感が襲来した。

ハイジン「おーい。俺に呼びかけた人いるんだろー。モエツイか?」

すると窓側から声がした。「きましたわね。ハイジン君。いつもいるお友達からは巻くことはできまして?」。そこ立っていたのは主役的なクラスメイトの女子だったのだ。俺は何を企んでいるんだろうか?と思いながら

ハイジン「その声、誰かと思ったけどお・・・お前さんは。どうゆうつもりだ。それにで・・ですわ!?」


主役的なクラスメイトの女子「ふっ!普段はあんな感じですが、本来の私はこうなのですわよ。」


ハイジン「どうゆう・・・いや、聞かないでおこう。」

俺は察したと考えている。何故かって?そもそも「~ですわ。」というキャラ要素が濃いギャルゲーキャラクターおきまり的な文化をわざわざ現実に用いる女子高生がいるだろうかという疑問が浮かんだからだ。確かに俺としては大歓迎だ。モエツイの時は初めてという事もいう事もあり妄想思考が優先して冷静な分析ができなかったが、今は冷静に分析できていると思う。そして大きな疑問が誕生したんだ。それはモエツイの「ツンデレ系」と主役的なクラスメイトの女子(ひとまず令嬢風女子としよう)の「お嬢様系」が俺の近くに存在するという点だ。あまりにも理想的(ギャルゲー的)過ぎる。こんな短期間で「ツンデレ系」と「お嬢様系」が都合良く現れるだろうか?と。俺があの時、空に向かって「はぁ~なんか普通だなぁ。ギャルゲーとかラブコメみたいな事起きないかなぁ~。」と呟いたのが始まりなのかもしれないという説なのかもしれないとも考えたがその呟きとのこの2人の関連性があるだなんて考えられない。もしも関連性があるとすればサクセスストーリーだ。しかし、何か違和感がどうもある。果たしてこれが俺の求めた生活なのだろうか?モエツイと令嬢風女子の共通点が何かあるとふと頭に浮かんだ疑問を俺は目の前にいる令嬢風女子に質問してみた。


ハイジン「なぁ、本当にお前さんは素がお嬢様系なしゃべり方なのか?」


令嬢風女子「そうに決まってますわよ。」


ハイジン「・・・・・・・本当にどうゆうつもりだ?あの時、俺とモエツイの会話に茶々入れたお前さんがなんで俺を助けるようなマネをするんだ?」


令嬢風女子「それは・・・」


すると理科室のドアが開いた音がした。誰かが入ってきたのだ。


(ドンッ~)


???「あ!ここにいたのねハイジン君!」


ハイジン「おっ!なんだモエツイかぁ~びっくりした。」


モエツイ「なんだとは何よなんだとはっー!!! それよりわざわざ探してあげたのだから感謝しなさいよねっ!!!。」


ハイジン「別に探して欲しいとは言ってないが(汗)」


モエツイ「あっ!前言撤回!たまたま理科室に用事があって来たらハイジン君がいたってだけよ。別にあなたを探してた訳じゃないんだから。」


そんな会話の最中に俺はチラッと令嬢風女子の方を見て見ると怒っていたというより何かに耐えているような様子だった。なんかこれ嫌な予感がするんだがと瞬間的に感じたので何か対処しなければと。だが遅かった。


令嬢風女子「ちょっとぉぉぉぉー!!!あたしがいるんですけど~!!!無視しないでくれる~。あぅ!」


モエツイ「ちょっと!ハイジン君!いったいなんなのよこの子!? あっ!」


そう、お互い面識は初めてではないけど初めての様な感覚だった。それは令嬢風女子は清楚で髪も整っていて、あの時(主役的なクラスメイトの女子)のスタイルとは大きく異なる。モエツイは俺の前でしか見せていない縦巻きツインテール姿で普段のスタイルとは異なるのだ。一瞬の時間だけ理科室の空気が静かになった直後にお互いが声で反射的に理解をした。短時間で2人の間にあの時の女の子だという共通認識が誕生し、俺は修羅場が開戦したという事を悟った。


モエツイ、令嬢風女子「あっーーー!!!」


令嬢風女子「あんたクラスでハイジン君とイチャイチャ話してた地味な子ね!」


モエツイ「あなたこそあの時、私とハイジン君の安らぎの時間を邪魔した陽キャラっぽいJK」


いやいやイチャイチャって、それにJKってモエツイもだろ!と双方に突っ込みを入れたいところであるがこの件に関しては俺は部外者ではないのと突っ込みを入れれば入れる程修羅場が更に激化するという危険もあったのでやめた。それはさておきさっきの令嬢風女子の一言で俺は確信した。やっぱり「お嬢様系」を演じていたのだと。だから俺は2人の修羅場が激化する前に確信の質問をぶつけようと思った。そして討論中の2人の間に割り入ってなんとか収まった。


ハイジン「はいはい~言い争いやめぃ~!とりあえず熱くなるなよ。そして令嬢風女子お前さんに2つ質問がある。1つ目はお前さん「ちょっとぉぉぉぉー!!!あたしがいるんですけど~!!!無視しないでくれる~。」ってモエツイに対して言ったが、ホントウのレイジョウならそんな言い方はしないと思うのだが?そして2つ目これは改めてだが何故、お前さんがなんで俺を助けるようなマネをするんだ?」

すると「令嬢風女子って私!?」と確認的な質問をされ、俺が「そーだ。」と返し令嬢風女子は観念したという表情をした後に口を開いた。


令嬢風女子「だって・・・だってさ(泣)前からハイジン君の事が好きだった。初めて会話した時から。それとハイジン君の友達とやってたゲームをチラッと見たの。それでハイジン君が「このキャラかわいいなぁ~。」って言ってたのがお嬢様系?のキャラクターだったみたいだったからこうゆう子が好きなんだなぁ~って。だから私は振り向いてもらう為にがんばろうって思ったんだ。」


俺はその言葉に納得と動揺を覚えた。そうだったのかという気持ちと何故あの時の様に普段のスタイルで接しようとせずいきなりなんちゃって令嬢キャラで無理矢理接してきたのかという事に関しては納得した。この告白に関してどう答えたよいかわからない。どうしたらいい?俺は告白シーンなんてギャルゲーでしか経験した事がない。だからこそリアル世界での突然のイレギュラーイベントに対応できない。ギャルゲーなら攻略通りに進行するし選択肢が限られている。選択を間違えたとしてもやり直す事が可能ではある。しかし選択肢が無限状態であるここでは場合によっては彼女(令嬢風女子)を傷つけてしまう。何か発言しないと。でも何を彼女に対して言えば良いか・・・かなり動揺した結果、数秒頭の思考が停止した。


すまない…令嬢。お前の気持ちに気がつかなくて。知覚できなかったのと突然過ぎて返すべき言葉が俺には…


そんな時にモエツイが真面目な表情で


「令嬢ちゃんは、ハイジン君に対しては普段通りでありのままの自分でいいと思うよ。」


俺は最もベストで勇気が出る様なモエツイの予想外の言葉に感動した。なんだろうか、この言葉は俺に対してもモエツイは言っているんだという気持ちになった。こんな感覚になったの初めてだ。ギャルゲーによってトキメク様な感覚とはまた違う。これが…リアルか!モエツイは俺に対して「補助したんだからあとはハイジン君が頑張りなさい。」というメッセージなのだと俺は気がついた?交わしてないけどモエツイの顔を見ていると聞こえてくる。


サンキューなモエツイ!


俺は覚悟を決めた。返すべき言葉が出てこない・今まで知らなかったからっていう自分の都合に合わせた理由があるから令嬢に言葉を何も返さないだなんてあいつの気持ちを踏みにじってしまい俺はマジの馬鹿野郎になるとこだった。令嬢は不本意だったと思うが勇気を出してカミングアウトした。なら…俺もそれに対して何でもいいから言葉を送らないと。今重要なのはとにかく言葉を送る事、そして俺の気持ちを正直に伝えるんだと決意した。深呼吸をした後、俺はゆっくりと口を開けて発言した。


ハイジン「まず。今までお前の気持ちに気がつかなくてすまなかった。そしてありがとうな令嬢。わざわざ俺の好みに合わせてくれて。でも…お前さんはお前さんのスタイルを大事にすべきだと思う。あと…令嬢風だなんて言ってごめんな…俺のために振舞ってくれたというのに。」


令嬢「そ…そんな。ここまでのキャラに仕上げるの苦労したのに!なんでよりによってハイジン君が言うだなんて…。どうしてなの!?」


ハイジン「それは令嬢が本来持っている魅力を失ってしまうからだよ!」


そう…真面目に考えたら人は無理にキャラ変をすると自分はこうだ、こういうスタイルでこういう人間なんだっていう本来のアイデンティティーを見失ってしまうからだと俺は令嬢の振る舞いを見ていて感じていたんだ。 そして、答え的な言葉にたどり着いた。ありのままでないと本来(リアル)でのギャルゲーライフは実現しないのだと。そして令嬢から当然予想ができる質問が来た。


令嬢「私に魅力ってあるのかな?私、あの時その子とハイジン君のイチャイチャに焼いちゃって茶々入れちゃたし。」


ハイジン「あるよ。というか今見つけた!令嬢は令嬢を振る舞うくらい俺に対して最高の[努力]をしてくれたという事にさ。それが魅力だ!」


い…勢いに任せて言っちまった。俺は自分の発言を振り返りかなり恥ずかしくなった。失敗だったか、言葉を選ぶべきだったと頭の中で後悔をしていると


令嬢「なによ…その言葉ずるいわ~。」


令嬢は泣き出したのだ。俺の言葉が悪かったと告白に対しての返事ではないと思うので反射的に「す…すまん変な事言って(汗)」と言った。するといきなり令嬢が俺の方へかなり接近して右の耳元で「ありがとう♡」と囁いた後、ほっぺたにキスをしてから理科室を出て行った。

直後に「あぁ・・・あああぁぁぁっっっーーー!!!」とモエツイの声が聞こえた。俺は本当に真っ白になり顔が真っ赤になった。うそだろ・・・あっ鼻血が。いまのめっちゃ萌えたわ・・・。本当の俺の事が好きなんだなぁという確信は勿論だがふと思った。令嬢はいつから俺の事が好きだったんだろうかという素朴な疑問が頭から浮かんだ。まぁ、それは聞ける時がきたらでいっかと垂れてきた鼻血を拭きながら考えていたら勢いよく理科室に誰かが入ってきた。


(ドォンー!)


ゴロ氏「ハイジン氏や!ようやく見つけたでござるよ!って何故鼻血を出しているでござるか!?そういえば理科室からハイジン氏のクラスメイトの女子が理科室から出ていき頬が真っ赤でござったが。!?まさかハイジン氏の此度の鼻血と関係が、のぅ~ハイジン氏や~。説明求むでご・ざ・る・よ!」


しまった。すっかり忘れていた。ゴロ氏に追いかけられていて巻く為に令嬢の誘い(呼びかけ)に乗って理科室にいるという状況に至ったという事を今更ながら思い出した。さてもうどうしたものかなぁ~


 俺は確かにギャルゲー的な生活を理想として掲げ願っていたが方針を改めなければならないと今回の令嬢カミングアウトで思った。確かにリアルでギャルゲーの様なお約束の世界を実現するのは無理難題レベルではある事は今に始まった事ではない。だったら俺のアイデンティティーをさらけ出しちゃえばいい、ある意味やばい奴だぜとさらけ出して俺を知った上でついて来てくれるのと相手もありのままの姿をさらけ出してくれる子こそがリアルギャルゲーの真のヒロインだと思うから。俺は今回貴重な経験をしたと同時にモエツイと令嬢という2人のヒロインからリアルのあり方と勇気を教えてくれた気がする。もしかしたら俺の周りで起きている事は俺だけに与えてくれた俺だけのギャルゲーがあの時の呟きが原因で実は始まっていたのだと思う。俺の理想は決まっているのでなく進化していく予感がする。(フラグっぽいなぁ~)

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ギャルゲー生活は俺の理想か否か? もえはぐるま @kagenohaizinron

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