ロリコンくんとロリコンコンちゃん
村上 響
プロローグ
「はぁ……」
夏休み初日。
学生ならば血沸き肉躍る長期休暇期間であるにも関わらず、
俺は早速地の底まで心が落ち込んでいた。
「結構、勇気を出したつもりだったんだがなぁ……」
手が痛くなるほどに冷えたスポーツ飲料のペットボトルを握りながら、
公園のベンチに座り込む。
俺がここまで喪失している理由は至って単純、告白してフられたからだ。
しかもたった五文字で。『ゴメン、無理』と言われただけで。
「人間って五文字でこんなに傷つく事が出来るもんなんだなぁ……」
ごろり、と重い身体をベンチに寝かせる。
この頭痛は水分が足りないからなのか、それとも精神的なものなのか――。
ふと、自分の額から垂れた汗を腕で拭う。
すると、そこには見知らぬ少女が一人、俺を見下ろしていた。
「お兄さん、大丈夫?」
そして、少女からすれば見知らぬ男であろう俺に優しい言葉をかけてくる。
少しでも恰好つけてやろう、と思った俺は、身体に力を入れて起き上がる。
「あぁ、大丈夫だよ」
「さっきお兄さんが女の人にフられてたの、見ちゃったんだよね」
直後、非常に重いボディーブローが飛んできた。
もしこれがボクシングなら既に2回目のダウンだぞ。
「まぁ……確かにフられたけどね。でもそんなに気にしてないよ。
長い人生、一度や二度フられただけで諦めちゃダメダメ。
三度目の正直って言葉もあるからね」
「今のより前にも一回フられた事あるんだ」
三回目のダウン。スリーノックアウト。
敗因は古傷を自ら晒してしまった事だろうか。
「あと二度ある事は三度あるって言葉もあるよね」
さらに踏んだり蹴ったりと来たもんだ。
初対面なのに随分とあたりがきついぞこの子供。
一体どんな教育を受けてきたんだ?
それともこういう事を言えとでも言われてきたのか?
にしてはアドリブが効きすぎているというか……。
もしかして、彼女の家庭は暴力的な言葉が頻繁に飛び交う家庭で――。
「はい、お兄さん、これ」
この少女が育ったであろう過酷な環境の妄想を始めて居たところ、
少女から手を差し伸べられる。
その手の上には塩分を大量に含んだ飴玉が握られていた。
少女の体温か、はたまた太陽の熱のせいかで僅かに溶けだしている。
「くれるのか?」
「いらないなら私が食べるけど」
「いや、貰っておくよ。一応……」
俺が飴を受け取ると、少女は立ち上って砂場の方へと足を進めようとする。
直後、振り返って俺の方を見据えて。
「お兄さん、名前は?」
「え?お、俺?俺は……
「そう、私は
またフられたらお話相手になってあげてもいいんだからね?」
くすり、と俺に向けた笑みはどこか無邪気でありながら、妖艶で。
その時、俺の心臓に矢が突き刺さったように、ちくりと胸騒ぎがした。
――俺、あの子に恋してしまったのか?
ロリコンくんとロリコンコンちゃん 村上 響 @yuzu-hatsuka
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