第14話 ポケット

「寒い!」


 神那は自分のバッグの中から未使用のホッカイロが出てくる奇跡を期待したが、そんな奇跡は起きなかった。今朝冷たくなって息を引き取ったホッカイロを学校のごみ箱に葬って以来である。


「あー寒い、寒い、指がかじかむ、寒い」


 するとそんな神那を見ていた双子の片割れが「あるよ」と言った。


「カイロ。探してるんでしょ?」


 神那は期待の眼差しを彼に向けた。

 彼は学生服のポケットに両手を突っ込んでいた。


「ポケット入ってるよ。あげようか?」

「ちょうだい!」


 片割れの右のポケットに左手を突っ込む。

 ない。


 左のポケットに右手を突っ込む。

 ない。


「ない!」

「残念ですが、こっちです」


 隣に立っているもう片方が、自分の制服の左ポケットからホッカイロを取り出した。


「そっちかい!」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る