第11話

気が付けば、あの日から私の背中には羽が無くなっていた。


私を置いて、好き勝手に空を飛んでいるのかもしれない。

はたまた、私の心の中でのんびりと泳いでいるのかもしれない。


私は私の羽で空を飛ぼうとして、結果うまくはいかなかった。

けれども、私の世界は確かに変わった。


取り巻く悲惨な世界は相変わらず醜く濁ってはいたけれど、私はそこに一つの光を見出した。

そしてその一筋の微かな光は、私の闘う理由になった。

私がこの世界で生きる十分すぎる光だ。


今までだって、気付かないようにしていただけで、本当はきっとそこら中に転がっていたのだ。

私が闘う権利を放棄してさえいなければ、きっとすぐに見つけることができたはずだ。


今、ここに宣言する。

私はすべてを賭けて闘おう。私が私であるために。


私にとって世界は決して優しくはない。残酷極まりないこの世界に私は闘いを挑むだろう。


長きに渡る闘いかもしれない。

けれども、私はこの世界が見捨てたものじゃないと思うから。決して、諦めない。


羽は誰しもが持っているものだ。


気付かないように心の奥底に隠してしまうのか。

かつての私のように一緒に深みへと自ら堕ちていこうとするのか。

もしくは、羽を自分の中から取り出し、外の世界へ羽をはばたかせてあげるのか。そ

れとも、自分の中の羽を愛し、受け入れ、共に歩んでいくのか。


世界は心底優しくはないけれど、私はそれでもいいのだと思う。


今はまだ全然苦しくても、いつかきっと、いつの日にかきっと、優しくない世界を許せる日が来ると思うから。

懐かしみ、愛おしくなる日がきっと来るから。


それまでは決して、信じることをやめないでいようと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

高殿アカリ @akari_takadono

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ