第8話 蜘蛛の巣③

シャルロット=ラノエルという貴族の屋敷に来た冒険者達はそれが罠だったと気がつく、彼女は大きな蜘蛛の姿になり、襲いかかってきた。




「くふふふ。あなた達を食らう前に少し遊んであげるわね。殺された子供のお礼もしなきゃだし。くふふふ。」




蜘蛛の頭部の部分から、人間…シャルロットの上半身部分が露出した。




「くふふふ…さぁ…いくわよ」




レウス達は先の攻撃で吹き飛ばされたヤンの状態を確認していた。




「ヤン!大丈夫か!?動けるか!?」




リーダーのレウスがヤンに話しかける。




「あぁ…大丈夫だ…鍛えているからな」




ヤンは擦り傷はあるもの無事だった。




「そうか…さて、あれをどうするかだな…」




レウスが考え込む。




真正面から戦う?無理だ、ヤンを軽く吹き飛ばすほどの力を持った化け物だ。逃げる?…逃げられるのだろうか…ここは1階だが窓には鉄格子が貼られている…というか背中を見せた瞬間に殺されそうな気はするな…だが、少しでも生存の可能性があるのは…逃げることか…




「全員、聞いてくれ…隙を作って逃げるぞ。このまま相手をしていると奴の子供の蜘蛛がワラワラとここに集まってくる。そうなったら終わりだ。だから、今この瞬間、女郎蜘蛛しかいないこのタイミングで逃げるしかない。」




「隙を作るってどうやるのよ?」




全員に作戦の内容を伝えた。






「くふふふ…」




女郎蜘蛛は蜘蛛の部分の口から炎を吐き出す。サラに化けていた蜘蛛よりも遥かに強力な炎だ。直撃はしていないものの皮膚がピリピリと痛み出す。そして、女郎蜘蛛の放った炎が壁に燃え広がった。




「ヤン!リーネ!奴を少しの間引きつけてくれ!アリスはその隙に魔法を放つ準備を!!」




そういってレウスは女郎蜘蛛の足元へ走り出した。




「くふふふ…いつまで耐えられるかしら?」




女郎蜘蛛はヤンの持つ楯に炎を当て続けていた。




すると、女郎蜘蛛の人間部分を目掛けて矢が飛んでくる。




「くふふふ…そんな攻撃効かないわよ?」




いとも簡単に飛んできた矢を片手で掴み、その場に投げ捨てた。




蜘蛛は単眼化した目が複数存在しており、それゆえに様々な方向からの攻撃に対応できる。




が、次の瞬間、女郎蜘蛛は光に包まれた。




「ライトニングランス…!!!」




『ライトニングランス』ーー強力な稲妻をを宿した魔法攻撃。槍ランスの形状にし、貫通性上げている。




「くふふふ…この世界の人間は面白い術を使うのねぇ…」




ライトニングランスによる爆風で発生した煙であたりが見えなくなる。




すると、煙の向こう側から声が聞こえた。




「くふふふふ…だから無駄だって言ってるでしょ?あなたが攻撃のチャンスを伺っていることも全て見え見えなのよ〜?」




「なら、これも見えたのか?」




女郎蜘蛛の足をレウスが大剣で切り裂いた。




「うぐっ…!?そ、そんな…いつのまに…」




「いくら目がいいからって流石に煙の中では意味がないだろ。それに、さっきの魔法はお前を狙ったわけじゃない。」




「くふふふ…何を言っているの?」




ゴゴゴっと屋敷がうねり声を上げ始めた。




「ま、まさか…!!」




「ああ、そういうことだ。」




レウスの作戦は屋敷の今いる場所を倒壊させ、その瓦礫で女郎蜘蛛を押しつぶし、尚且つ、逃げ道を確保することだった。女郎蜘蛛に上の階部分が落ちてくる。足を切られていたため上手く逃げられずにそのまま下敷きになった。




「よし、今のうちだ逃げるぞ!!」




4人は崩れた瓦礫を足場にして二階へ移動した。




「レウス!これからどうする!?」




「外へ出られる場所を探す!この屋敷に入る前、二階部分にバルコニーがあるのをみた!そこから飛び降りられるはずだ!!」




廊下を全速力で走り、4人はある部屋にたどり着いた。




「ひっ…これって…」




アリスが震える声で話す。




どこのかの肉片や、骨、腸や肺といった臓器であったものが大量にあった。これらは妖怪の”食べ残し”だった。




「早く外に出たい…こんなの嫌だよ…」




リーネがそろそろ限界だ。一刻も早く外に出なければ。




探していた部屋はすぐに見つかった。4人はすぐにバルコニーに出る。




「よし、飛び降りるぞ!」




こうして4人は屋敷の外へ出ることに成功したのだった。






はあはあと息を切らしながらレウスが4人に話しかける。




「とにかく、冒険者ギルドへこのことを伝えに行くぞ!」




「しかし、奴の話が本当ならば…冒険者の中にもあの化け物が紛れ込んでいるはずだ」




ヤンの言う通りだ。屋敷の外だからといって油断はできない。蜘蛛の巣のように化け物を張り巡らしている可能性がある。だが、どうやって見破る?見た目は人間で全く区別がつかないのだぞ…




そうこうしている間に冒険者ギルドについた。


とにかく、一番信頼できるギルドマスターに直接この話を持って行こう。今できるのはそれぐらいだ。




レウスは受付嬢にギルドマスターと話がしたいと頼み込んだ。




「申し訳ございません。ギルドマスターはただいま手が離せない状況ですので…」




「緊急事態なんだ!今すぐにでも動かないと街が滅ぶぞ!!」




「なんの騒ぎだ?」




二階に続く階段から男が降りてきた。




「ギルドマスター…この方が」




受付嬢が男に事情を説明する。




「なるほど、大体の事情はわかった。とりあえず執務室へこい。」




そう言われて、4人は二階にある執務室へと向かった。




「まぁ座ってくれ。それでお前たちは、蜘蛛の化け物が人間に化けてこの街に潜伏してると、そう言う話だな?」




ギルドマスターとの話は基本的にレウスが受け答えをしている。これまでの出来事を改めて詳しく説明する。




「そんなことはありえない、すぐに立ち去れ」




4人はまさか相手にされないと思っていなかったため、驚愕の表情を浮かべる。




「と、言えたら楽なんだろうな。」




ギルドマスターが一呼吸起き、話を続ける。




「そうだ、自己紹介がまだだったな。この街の冒険者ギルドのマスター、キースだ。よろしくな。」




4人も自己紹介をして、キースは先ほどの話の続きを始めた。




「ギルドマスターを長年やっているとな、わかるんだよ。お前たちは嘘を付いていない。」




キースは頭を抱えながら話を続ける。




「とりあえずだ、その貴族に化けている親玉の処理を急がなくてはな。お前らとの戦闘で弱っている今がチャンスだ。よし、信頼できる冒険者を集める。お前たちも協力をしてくれ。」




正直、4人はもう二度とあの屋敷には行きたくないと考えていたが、人の命が奪われている以上断れるはずもなく、素直に了承した。




「すまない、感謝する。では、明日またこの時間にギルドへ来てくれるか?」




「わかりました。」




今日は疲れた…宿を探してゆっくりと寝たい…寝れるか分からないが、ベッドに入って少しでも休まなければ…『禁断の果実』の部屋はまだ空いているだろうか…?




4人は『禁断の果実』へ歩みを進めた。






あたりはすでに闇に沈んでいた。『禁断の果実』から放たれる灯りが見えてきた。




「どうも、まだ部屋は空いているかい?」




「あ!またきてくれたんですね!!」




彼女だ、まだ幼いながらもこの宿で働いている。アイアという少女だ。




「ああ、安くてとてもいい宿だからね、またきてしまったよ」




「わあ!ありがとうございます!以前と同じ、二部屋でいいですか?」




「それでよろしく頼む。」




こうして、4人は疲れを癒すためベッドに入った。




明日はあの化け物と再び戦うことになるだろう、勝てるだろうか?いや、勝つしかない。今は寝よう。今日は本当に疲れた…

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