第6話 蜘蛛の巣①
商業が盛んで活気のある街『ヨコハマ』
「いらっしゃい!いらっしゃい!ヨコハマ名物、チューカマンだよ!!」
「お兄さん!お兄さん!シーマイ買わないかい?」
「食べ物もいいけど、武器や防具も忘れずに!今なら盾をつけちゃうよー! 」
あちらこちらで、商売をする大人たちの声が聞こえてくる。
そんな市場に4人の冒険者パーティが来ていた。
「ね〜、何か食べて行こうよ〜」
市場の匂いに魅了されているのは弓使いのリーネだ。
「ダメだ、まだこの街に来たばかりで金がないだろ。食うのは稼いでからな。」
そう言うのは大楯を背中に背負いと片手剣を腰にぶら下げるしっかり者のヤンだ。
「まぁ、いいじゃない。ここに来るまでの道で魔物を倒したし、この素材を売れば少し余裕があるんじゃない?」
リーネの意見に賛同するのは、魔術師のアリスだ。
「まぁ…少しくらいならいいか…分かったよ、まずは食事にしようか。」
女性陣の意見に流されているのは、このパーティのリーダーであるレウスだ。
皆、平民の出であるため姓はない。
「やったー!あっちの屋台に行こう!!」
リーネが3人を引っ張ってチューカマンのある屋台へ向かった。
「すみません!チューカマン4つください!」
リーネが注文すると後ろの3人から声がかかった。
「む、俺は食べないぞ」
「え?4つとも私が食べるんだけど…」
3人は呆れた様子でリーネをみる。「あはは…」と先ほどまでリーネの意見に賛同していたアリスも流石に苦笑いを浮かべていた。
チューカマンを買ってきたリーネは勢い良くかぶり付いた。
「おいしーーーー!!なにこれ!!外はふっくらで、中はジューシー!!これを最初に考えた人は悪魔的な天才ね!!」
その後あっという間にリーネはチューカマンを4つ全て食べ終えてしまった。
「次は向こう!!」
リーネが匂いに釣られて走り出した。
「おい!リーネ!!!待て!!!」
「まったく、あいつは…」
「仕方ないわよ…リーネだもん」
4人は一通り屋台を楽しむと宿を探すために市場を離れた。既に辺りは暗くなっている。
「き…禁断の果実?」
アリスが宿の名前を読み上げる。
見た目はちょっと高級そうな宿だ。
「た、高そうね…」
アリスが懐の心配をしている。
「もう時間も夜も遅いし、多少高くてもいいよ。ここにしよう。魔物の素材を売ったあまりの金がまだあるし。」
レウスがそういうので、4人は宿の中へ入っていった。
ドアを開けるとカランカランと音が鳴る
「いらっしゃいませ!4名様ですか!?」
まだ幼さの残る可愛らしい女の子が急ぎ足で出てきた。意外だなと思いつつもレウスは可愛らしい店員さんの質問に答える。
「あぁ、4人だ。食事なしで二部屋借りたいんだが、大丈夫かな?」
「えーと…食事なしで一泊4銀貨です!二部屋ということなので8銀貨になります!」
意外と安いな。
「じゃあ、よろしく頼む」
「はい!こちらへどうぞ!お部屋までご案内いたします!」
階段を登り、案内された部屋はしっかりと掃除が行き届いており、大きなベッドが左右の壁沿いに配置されていた。今日はゆっくり休めそうだ。
「では、私はこれで失礼します!何かございましたらいつでもお声がけください!」
ぺこり、と頭を下げて彼女はいなくなった。
「ふぅー、今日はもう疲れたから早速寝るとするわ。」
レウスがベッドへダイブした。
ヤンはベッドへ腰を降ろし、防具を外している。
「明日からまた魔物の討伐か?」
ヤンが明日の予定について聞いてきた。そういえば、まだ予定の確認をしていなかったな、リーネやアリスとも先に話し合ったほうがいいか。
「ヤン、ちょっと二人のところへ行くぞ」
リーネたちの部屋は隣だ。
部屋のドアを開けて中に入る。
「リーネ、アリス。明日の予定についてまだ話し合っていなかった。少し話せるか?」
レウスの目に飛び込んできたのは、二人の肌着姿だった。
「「変態ッ!!!!!!」」
レウスの意識が闇の中に消えていった。
ちゅんちゅんと外から鳥の鳴き声が聞こえる。
「あれ…俺いつのまに…」
目を覚ますとベッドの上に寝ていた。
たしか…リーネたちの部屋で…
何があったのか思い出そうとしていると隣のベッドに座っていたヤンが口を開く。
「起きたか?お前、何をしてるんだ…昨日アリスにぶん殴られて気を失ったんだぞ」
アリス…あ!!思い出した…あいつらの部屋にノックなしで入って肌着姿を見てしまったんだ…
「あぁ…全て思い出したよ…あいつらはどこだ?」
「この宿の一階で飯を食ってるぞ。お前の金でな。」
なに!確かに財布がない!!
「あいつら…!でも…まぁ俺が今回は悪かったし、仕方ないか…」
「さて、俺たちもいくぞ」
一階の食堂へ向かうと、アリスとリーネの姿が見えた。
「あら?変態が起きたみたいよ?」
「変態さんおはようございまーす」
なんだろ、かなりリーダーとして危うい立ち位置にいるのではないか?とりあえず、まずは謝ろう。
「昨日はすまなかった。ノックもせずに部屋に入ってしまった。今後、気をつけるから許してはくれないか?」
素直に謝ると二人ともあっさり許してくれた。なんだかんだいっていい奴らなんだよな。
「あ、これ返すわ」
アリスから渡されたのは自分の財布だ。かなり痩せたな…俺の財布…。
「皆さんもうお帰りですか?」
昨日の彼女だ。
「あぁ、短い間だったが世話になった。そういえば名前を言っていなかったね、俺はレウスだ。」「ヤンだ。」「リーネです!」「アリスよ」
それぞれ少女に名を教える。
「私はアイアです!またいつでもいらしてくださいね!!」
「あぁ、また」
そういい4人は禁断の果実をあとにした。
冒険者ギルドへ向かう途中の道で、4人はある異変に気が付いた。なにやら騒がしい。昨日の活気のある感じではなく、ざわざわと落ち着きのない声だった。
「だ、だれか!!だれか!!うちの子を知りませんか…!!昨日からうちに帰ってきてないんです!!!だれかッ!!!!」
中年の女性が顔をしわくちゃにしながら叫んでいた。
レウスは近くにいた人に話しかけた。
「すみません、何かあったのですか?」
「ん?ああ、あそこにいる女の、子供が消えたんだとよ。」
男は話を続ける。
「この街な、最近人が頻繁に消えるんだよ。噂だと貴族様が住民を攫って奴隷承認に売っぱらっているって話だ。」
「そうですか、貴重なお話をありがとうございます。」
冒険者として何とかしてあげたい気持ちはあるが、なにか嫌な予感がする。関わってはいけないような感じだ…
「とりあえず、冒険者ギルドへいこうか…」
3人は無言で頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます