第2話 魔王

ケインとグスタフは椅子に腰をかけた。

「それで要件はなんだケイン」

先程まで気さくだったグスタフの雰囲気が変わり、真剣な眼差しでこちらを見つめた。


「今は俺が居なくなってから、どのくらい経ったんだ?墓場の巣窟や村の様子があまり変わってないから、そんなに経ってないのか?」


「ざわついていた村人達も言っていたが、お前さんが居なくなってから今は2年が経過したところだ」


「魔王がいなくなったおかげで、世界はすっかり平和になってな、村も賑わってきた。村の外では、魔物も減り交易もしやすくなった。」


少し不満そうな顔をしながら、話した。


「何か、あったのか?」


不満そうな顔をみてケインは問いかけた。


「魔物も減って交易がしやすくなったとは言ったが、減りすぎている。魔王がいなくなったからといって、ここまで魔物がいないのはおかしい。まるで何処かに集結してるような感じがしてならねぇ」


ケインは洞窟で物足りなく感じた事をふと思い出した。


「なるほど。だから墓場の巣窟のモンスターも減っていたわけか」


すると突然グスタフはこちらを睨みつけた。


「ケインがいなくなってすぐにこのような状況になったんだ、何か知ってるだろ?まさか何年経ったか聞くだけのために、ここに来たわけじゃないだろ。」


「俺はこの村の長でもありギルドマスターだ、村のためにも若え冒険者のためにも知ってることは話してもらうぞ」


グスタフの迫力に圧倒されてケインは観念したかのように話し始めた。


「わかった。知ってることを話すよ」


一呼吸いれて、ケインは言った


「実は...魔王は死んでいない」


衝撃の真実にグスタフは驚き、立ち上がった。


「な!?魔王は俺らがしっかり倒しただろう!仮に生きていたとしてどうして今まで攻めてこないんだ!それに魔物が減ってるのはなぜだ、」


「魔王とは俺らと戦う前に話をした。俺らにやられたことにしてくれないかと頼みにな。」


「なんでそんな事をしたんだ」


「世間が思っているほどあいつは悪いやつじゃない、実際に人間に化けて人助けなどもこっそりやっていた。ただ、世の中の勝手なイメージで魔王がモンスターを出現させてると思われたせいであいつは悪者にされた。」


ケインは手を握りしめた。


「あいつは何もやっていない、俺らと仲良くしたかっただけなんだ。」


目をそらし頭がだんだんと下を向きながら語り、グスタフは信じれず頭をかき考え込んで「はぁ〜」とため息をつく


「信じ難いが仮にそれが真実だとして、魔物はどうして減ってるんだ。今の話だと魔物は今まで通り出現するはずだろう?」


「俺にもそれはわからない。だから俺はまたこっちの世界に呼ばれたのかもな。」


顔を上げグスタフの目を見つめる。


「俺は事実を確認するためにも魔王に会いにいく。そこでお前にも付いてきてほしい、今日俺がここに来た理由がこれだ。」


お互い顔を向き合ったまま、静寂が続いた。




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異世界に飽きた魔導師 風間 健斗 @schlusselriver

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