第21話 ジャンが、ジャキン。
ジャキン。
耳元で歯切れの良い音が鳴った。
くるりと後ろを振り返ると、何故か少しだけ顔の赤くなったジャンが、私の髪の毛を持ったまま仁王立ちになっていた。
「あぁ、良い感じだ。ありがとう、ジャン。……どうした? 熱でもあるのか?」
立ち上がり顔を覗き込もうとしたところで、髪の毛を押し付けられるように渡された。
「いや、大丈夫。それより、これ。早く編まないともう夕方になるんじゃない?」
「まぁ、そうだな。ここで編んでても良いか?」
「分かった。僕は少し外に出ているから、準備が出来たら一緒に屋敷に行こう」
そうして、とたとたとどこか頼りない足取りで、ジャンは部屋を出ていった。
**********
部屋を出た途端、僕は扉を背にずるずるとしゃがみこんだ。
「はぁぁぁぁ」
長いため息をつき、未だ火照る頬を掌で冷ます。
セシリアは気付いていたんだろうか。
あのとき、彼女が少しだけ微笑んでいたことを。
『そういうところが、好きだな』
またもや、先ほどのセシリアの笑顔が蘇ってきて、ぼぼぼぼっと顔に火が付く。
「本当に、勘違いしそうになるじゃないか」
そう呟くと、半ば八つ当たりのように、僕は扉を拳で軽く叩いた。
BL恋愛ゲーム世界に転生しました。 高殿アカリ @akari_takadono
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