第7話アクマでもマジ!シャン!はフラグを立てるのがお好き。
アクマでもマジ!シャン物語7
第二十二章 アクマでもマジ!シャン!はフラグ立てるのがお好き。
コンビニで俺が待ってるとユルシちゃんの事で、途端に心配になってきた。レジで見てるとゴッ殿はレジで相変わらずお客さんにタメ口で話してる。
んでよ。俺の隣に居るのがファンサたん。巨大宗教連合の会長の割に普通の高校生?だ。普通じゃない部分があるとしたら、女子なのに男子の制服着てるのと、帯刀してるのと、四代元素系の水系最強の魔法使いである事以外は割と普通だ。
「おーいファンサたんなんか策はあるのか?」
「そうそう、何も考えてなさそうに見えるんよ?」
「まぁまぁ僕にお任せ!」
大丈夫だろうか?なんか、ただの野次馬根性で見物目的なのではなかろうか?と勘繰っていたところ、ユルシちゃんのお母さんがコンビニに着いた。着くなり俺を見つけて食ってかかる。
「あ、いた!誰がお義母様じゃ!うちのユルシちゃんを元に戻して!」
「まあ、落ち着いて話を聞いて欲しい。ユルシちゃんを元に戻す事は誰にも出来ない。魔法使いになれた者は魔導の探求を止める事はしない。つまり……ユルシちゃんの生きやすい様な環境作りが重要なんだ。」
「これが落ち着いていられるものか!シバいちゃる!そこに直れ!」
そう言うなりユルシちゃんのお母さんはポケットからメリケンサックを取り出した闘う気満々だ。なんか、闘う流れになってしまったが?はて?
「そこのおじさんとお姉さん喧嘩は外でやってー!それと僕が仲裁役を買って出る!コンビニ裏で思いっきり戦ってね!」
「え、何か解決してくれるって結局己の拳で語れってだけ?仲介なのかそれ?」
「上等だわ!」
そそくさとコンビニ裏に放り出された俺と、ユルシちゃんのお母さん、ファンサたん。
ファンサたんがユルシちゃんのお母さんにスポーツドリンクを渡してる。
「ここまで喉を張り上げてきつかった!はず!スポーツドリンク上げる僕達友達握手で友達!」
「は、はぁ。」
なんなんだろう?変な奴だな。って、ユルシちゃんのお母さんの後ろに居るのは秘密だ。秘密なのだが、猫の姿では無くあの巨大な黒い青い眼のライオンの姿で、こちらに一歩ずつ近付いて来てるのだが、ユルシちゃんのお母さんは怒り心頭で全く気付いていない。
「まぁ、喉も渇いてたから飲んじゃる。ごきゅごきゅ……ぷはぁ!」
「あの、う、後ろ……」
「後ろ?」
ユルシちゃんのお母さんは巨大な黒い青い眼のライオンを見て気を失った。
†††
ユルシちゃんのお母さんが気を失ってか十分くらい経った時の事だ。コンビニ裏に表のベンチを運んで、ユルシちゃんのお母さんをベンチに寝せて、毛布が無かったからダンボールを身体に被せて、とりあえずの処置をした。
んでよ?ファンサたんとゴッ殿が色々言ってくる。「僕!ここまで御膳立てはした、後よろしく。」「俺の友達がここまで協力してくれたから貸し一つな?なあ秘密?」「秘密にまで貸し扱いか?ってか意味が分からん!」
するとファンサたんが、「人払いの結界張ってもいいけど、秘密もいるから、僕とゴッ殿はバイト戻るね。目を覚ますまで、目を離さないでね!」
こうしてよく分からない注文と、よく分からない貸し一つを押し付けられた。
†††
うーん。なんだったんだろうか?とりあえず目を覚ますまでベンチに横に寝かせておく。
すると、やっと目を覚ました。「うーうん、ここはどこ?わたしは何をしちょる?」なんてぼやきながら目をこすってる。目を離さないでと言われてたから慌てて、目を覗き込みながら、「お目覚めですか?」と普通っちゃ普通の言葉をかける。これが何か解決になるのか?すると……
「助けてくれてありがとう……あなたのお名前は?」
「いえ、名乗った事はあるよ?アクマでもマジ!シャン!と言うのが名前だ。」
「アクマでもマジ!シャン!?長い名前だね!わたしはシルシって言うよ。」
「名前が長いなら好きに呼ぶといい。シルシさん、俺がユルシちゃんに魔法使いの在り方を教えないとユルシちゃんはこれから先が心配だ。だから、俺とユルシちゃんが会うのを反対しないで欲しい。」
何か様子が違う。やけに好戦的だった態度が雲隠れどころか霧散してて、やけに甘ったるい態度になってるユルシちゃんの母、シルシさんと言うらしい。何か話しが上手く行きそうだ。
「ユルシちゃんに会う時はわたしも同伴なら好きにしていいかんね。アクマでもマジ!シャン!さんとユルシでは、親子ほど歳の差があるし、母親としては心配だから……シルシと付き合うってのはどう?」
「……え?話が変な方向に飛んだ!何故そうなるんですかお母さん?」
「お母さんって言わないで、シルシって呼んで。」
明らかに変だ。さては先程ファンサたんがあげたペットボトルに何か仕掛けがある……と思う。だが、これでほぼ解決したも同然なので、これはこのままにしてみる。
「シルシさんさえ良ければ、ユルシちゃんに魔法講義をたまにしたいのだ。」
「ええ、娘共々よろしくお願いだかんね!」
こうして母親公認でユルシちゃんは魔法講義をたまに受ける約束をした。
†
コンビニまで後を付けて来てたユルシちゃんにゴッ殿とファンサたんが話かけてた。なんでもユルシちゃんがピンク色の髪をしたゴッ殿を見たって言ってて、ゴッ殿とファンサたんは青ざめていた。
「あんにゃろ、またこの街に来て何する気なん?」
ゴッ殿がガタガタ震えながら、拳を握りしめている。
†††
第二十三章 オリ刃
ゴッ殿達とコンビニで屯ってたら、ピンク髪のゴッ殿のソックリさんがコンビニにやってきた。横にユルシちゃんくらいの男の子を連れてる。「道案内ありがとう。」男の子にお礼を言ってる。ゴッ殿がベンチから立ち上がり、食ってかかる。
「何しに来たんよ!オリ刃!」
オリ刃と呼ばれたソックリさんは見た感じゴッ殿より歳上だ。お姉さんか何かか?
「ん、あぁちょっとお前の鎧を拝借に来たんだよ。貸してくれないか?」
え、あの鎧って貸借り出来るのか?
「俺の大事な鎧だ。貸すわけないんよ!」
「んじゃあ力づくで奪うわ!」
†
いきなり戦闘態勢になったから、俺はユルシちゃんとシルシさんをコンビニ裏に避難させる。ゴッ殿達は表でやり始めた様だが、どちらにせよ勝負は一瞬だろう。
コンビニ裏から戻ってくるなり、ゴッ殿が変身している。これは勝負あったか?相手のオリ刃は帯刀はしてるものの、あの鎧に比べたらどうなんだろうか?強そうには見えるが、喧嘩に明け暮れているゴッ殿が一目置く存在だ。油断ならない。
「その鎧欲しかったんだ。今手に入れる!」
「やってみろよ!右アーム逆装!」
ロケットパンチみたいに……と言っても飛んで行ったのは腕部分だが、ゴッ殿の鎧の右アームが飛んでいく。その時、オリ刃が抜刀したと思ったら、ネットが出てきた。虫取り網のでっかいやつだ。電光石火の鎧飛ばし攻撃を逆にネットで捕まえるオリ刃。
「よし!まず一つゲット!写メ撮ろ写メ!」
ゴッ殿は青い顔してる。オリ刃は写メ撮りながら隙だらけだが?攻撃を躊躇ってるゴッ殿。
「お、貰っていいのか?よっと。」
そう言いながらオリ刃は鎧の右アームを自身の腕に着ける。
「お、サイズぴったり。まぁ姉妹だからそれもそうか、今なら逆装って言ったら鎧回収出来るぞ?やらないのか?」
「……」
「ちぃ、つまんない奴。キーワードが録音されるのがそんなに怖いか?」
!?
前にゴッ殿が言ってた普通は俺にしか装着出来ないのの例外か。
俺はファンサたんと秘密に目配せとテレパシーを飛ばした。
(みんな一斉に逆装って言ったらそこに俺が音撃術式を組む、魔力で音声を膨らませて相手のスマホで認識出来ない音域にする。やるぞ!)
テレパシーはゴッ殿にも伝わった。ゴッ殿はこちらを振り向き親指を立ててGOサインを出してる。やるしかない。
ゴッ殿、ファンサたん、秘密、俺が大声で叫ぶ!
「逆装!!!!!」
オリ刃の腕から右アームがパージされて、ゴッ殿に返ってきた。オリ刃は怯んでる。
「痛っ、」
「勝負ありだな、これで終いだ!」
オリ刃が倒れてるところに、ゴッ殿の拳が飛んで行った。そこに乱入者が現れた。
「止めて!もう勝負は着いた!」
さっきオリ刃をコンビニまで道案内した子だ。
「よせ、何のつもりだ?このオリ刃が負けるだとか寝言は……」
「ダメ、お姉ちゃん怪我してる。」
「俺はオリ刃なんだよ!こんな紛い物に負ける訳にはいかない。」
右腕が血塗れのオリ刃が立ち上がった。今更何をするつもりなんだ……?
「さっきのお返しだ!」
空中にスマホを投げて、いや、何も起こらない。ゴッ殿の鎧は逆装しない。だが、惚けていた俺達は呆気に取られた。ゴッ殿が左腕を取られて手首の関節を決められて転がされた。鎧の欠点は打撃には滅法強いものの、装着者自身の可動域を制限しない作りになってる為投げ技や関節技には鎧の装着の有無は関係無い。つまり投げ技や関節技には無意味なのが鎧である。
「ぐぁ!」
「じゃあ、この手甲は貰って行く。じゃあな。」
ゴッ殿が怪我をして、ファンサたんは泣いている。秘密はテレポートしてオリ刃を追いかけて行った。俺はコンビニ裏に行ってユルシちゃんとシルシさんに事の次第を話して家まで送った。
†††
ファンサたんが救急箱から色々取り出して応急処置を施す。一応こういう時は家族に連絡が行く。ゴッ殿の妹がやって来た。黒髪ロングの大人しそうな子だ。ゴッ殿の妹だからって特に変わった子では無さそう。
「ファンサたんさんお久しぶりです。お姉ちゃんがお世話になってます。」
「いやいや、僕の方もゴッ殿にはお世話になってるよ。」
「将来はお姉ちゃんになる人だから、もっと気楽に良いですよ。」
ほうほう、ゴッ殿とファンサたんは家族公認カップルなのね。
「あー、うちのボーも世話になってるね。ボーの事よろしくね。」
「ところで、お姉ちゃん大丈夫なんですか?」
「うーん、病院連れて行った方がいい。折れてるかも?」
ゴッ殿が痛みから目を覚ました。顔を覗き込むファンサたん。
「ってて、いってー。病院連れてけよこれ折れてるかもしれない……」
「分かった。じゃあお爺ちゃん達には後からわたしの方から言っとくから、お姉ちゃん病院行こう。」
「ズキュン来てたのか。ああ、頼む。病院連れて行ってくれ。」
しかしこのコンビニも変な来客ばかりで経営大丈夫なのかな?とか変な事考えていた。
「ん、ああ、このコンビニはスリルが売り物なんよ。俺が働き出してから喧嘩は日常茶飯事だ。もっとも、キョーダイが来てからはその日常茶飯事が更に加速したんよ?」
ゴッ殿にテレパシー垂れ流し状態だったのを忘れていた。だが、元気そうで良かった。
「ゴッ殿はリベンジするのか?なんなら5分のキョーダイとして加勢するぞ?」
「いや、リベンジはちょっと時間くれ、あんなん俺一人で十分だ。」
「ん?というか何者なんだ?ソックリさんだが、お姉さんなのかな?」
「まぁ、もっともな疑問だろうな、クローンなんだよ。俺はアイツの。」
!?
「そうか、しかし何故戦うんだ?」
「アイツは人間をペンギンに変える魔法使い。人間狩りをする悪魔なんだ。」
「人間をペンギンに変える?えらいファンタジーな魔法だな。術式の組み方も想像出来ん。」
「なんでも生まれつきらしい。奴の目を見ただろう?灰色の目には、本当に灰色の世界しか見えてないって話を昔聞いた。」
「なるほど、魔眼系の能力か、しかし歪みきってるな。」
「まあ、俺は奴のクローンだけどな。」
それだけだと因縁があまり見えないからもう少し深く聞いてみる。
「クローンって何人もいるのか?ズキュンはあまり似てないがクローンなのか?」
「ズキュンは違うくて、俺も含めてクローンは4人いる。クローン姉妹の中では俺が末の妹だ。」
「クローン姉妹の中だと俺は弱い部類だ。なんの魔法も使えないからな。」
「じゃああのオリ刃に勝てる算段はあるのか?」
「勿論あるよ。ファンサたん鎧の改造頼める?」
「ん?同じ事考えてた!もう改造してあるよ!」
これは禍々しい改造だ。変身する為の左手甲はオリ刃の手に落ちていて、残りの鎧はこちらにあり、オリ刃はキーワードの音声データを入手していない。
ゴッ殿は闘志を燃やしたまま病院に行った。
秘密がテレポートでコンビニ裏に帰って来た。オリ刃のヤサを割ったらしい。県内だったが、割と街の方だ。これはゴッ殿の腕が治り次第出入りだろう。
「秘密、よく手を出さなかったな。」
「あ、あ、ゴッ殿はこのくらいてめぇでけつ拭くだろうからな。」
ってかさ?
「ファンサたん。あのペットボトル何だったの?」
「ん?惚れ薬!」
アクマでもマジ!シャン物語 天獄橋蔵 @hashizho
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