第6話ユルシの帰るべき場所。

アクマでもマジ!シャン物語6


第二十一章 ユルシの帰る家。


おじさんが帰りの電車に乗ってコンビニに寄った。ゴッ殿お姉ちゃんに何やら相談してるみたい。ゴッ殿お姉ちゃんは休憩に入りユルシとおじさんと話始めた。ゴッ殿お姉ちゃんは猫さんに餌を与えている。

「んで、話ってなんなん?」

「あのな、ユルシちゃんが魔法使いになってしまった。んで、これから先、日常生活に支障をきたすから一人でも理解者が欲しい。それで、ゴッ殿にもユルシちゃんの力になってもらいたい。」

「そーなん?いいやん?魔法使いになれたら喧嘩も強くなるし。」

「ゴッ殿お姉ちゃんユルシは魔法使いになって困ってるの、それにユルシは喧嘩しないよ?」

「いやいや、喧嘩強くなるからいいやん?」

困り果ててるユルシを見てゴッ殿お姉ちゃんは、喧嘩が強くなるからいいとかいい加減な事を言ってる。困ったよ。

「ユルシは誰とも戦いたくないよ!」

ゴッ殿お姉ちゃんは表情を曇らせて、声のトーンを下げて強い口調で語り始めたよ。

「力を持つ者は望む望まざるを得ずに喧嘩に巻き込まれる。今からでもそれだけは覚悟しておいた方がいい。ユルシちゃんが俺くらいの歳になる前にはもう喧嘩の一つや二つはやってるだろうし、その時に魔法を使わざるを得ない。」

ゴッ殿お姉ちゃんの威圧感に負けてしまったよ……

「分かった。その時が来たらユルシは魔法を使うよ。」

「ゴッ殿の言う事はもっともだ。魔法使いに争いは絶えない。ユルシちゃんも覚悟しといた方がいい。」

「うん。でもそれってまだ先の話だよね?ユルシは、今は何をしたらいいの?困る事って具体的にまだ分からないよ……」

ユルシは不思議に何か本能的に普通の日常生活が送れない事は分かる。でも、具体的に何がどう普通じゃないのか分からない。

おじさんが何か教えてくれそう。黙ってゆっくり聞いてみよう。

「今から家に帰ったらお母さんにありのままを話すんだ。ユルシちゃんの居場所が家にある事を願う。くれぐれも嘘は吐いたらダメだよ。」

「うん……ママ怒るかな?」

「そりゃ多分怒るだろうな。」

「怒ってくれる親が居るだけいいやん?俺なんて、両親いないんよ?」

「そうなのか。ゴッ殿の事あまり知らない。苦労してるんだな。」


話がユルシの話からゴッ殿お姉ちゃんに変わっていった。

「俺は祖父母と暮らしてるんだが、家がこの街のハスハスショッピングモールなんだけどさ、世間知らずだからバイトしてこいって爺ちゃんから言われて、とりあえずバイトしてる。」

「ハスハスショッピングモールって言ったら超金持ちじゃん!すげー!お嬢様じゃん?」

「えー、すっご〜い!ユルシあそこの5階の本屋さんでよく立ち読みしてるよ。」

「まぁ実家が金持ちなのは認めるが、俺が求めるのは財力含む強さ全てだ!」

「それであの鎧か、どうなってるんだあれ?空中から飛んで来たぞ?」

「鎧に魔法がかかってるんかな?キーワードを言ったら鎧が飛んでくる。」

ユルシは、二人の話を黙って聞いてる。すると、ゴッ殿お姉ちゃんが、スカートのポケットから銀色の手袋?みたいなのを出した。なんだろうあれ?

「この手甲部分だけ普段持ち歩いてる。バイトの時だけは手から外してるんよ?んで……普通は……俺の音声にしかキーワードは反応しない。音声認識って訳でも無いんよな。 」

「普通はって誤作動あったのか?」

「んー、まあ、ちょっとなー」

「ゴッ殿お姉ちゃん変身出来るんだよね。すっご〜い!カッコいい!」

「ありがとうな。」

「ゴッ殿が金持ちなら、万が一の時はユルシちゃんを匿ってあげてほしい。」

「いや、それは流石に5分のキョーダイの頼みでもちょっと。困るん。」

ユルシは不安が段々と強くなった。ユルシが思っている以上に、事態はより深刻みたいだよ……

「そうか、まあ、何かあったら相談くらいは乗ってあげてね。」

「そういや、5分のキョーダイって言ったらこのにゃんころがいるじゃん?こいつを用心棒にしたらいいやん?」

猫さんだ。可愛いけど、用心棒?5分のキョーダイ?何の話なんだろう?すると……

「何だ?なんで俺様が何で飼われないといけないんだ?」

猫さんが喋った!!

「猫さんお話出来るんだ!すっご〜い!ユルシと話そう!」

「何だ?俺様はゴッ殿とこの魔法使いの5分のキョーダイで、地上最強の生き物だぞ?いくら何でも序列があるだろ?」

序列?何の話だろう?

「序列?」

「待て、ユルシちゃんはまだ序列って分からない。今はその話はいい。秘密にユルシちゃんの用心棒をやってもらいたい。頼む!」

「断る。俺はゴッ殿とコンビニに居たいんだ。」

「秘密は俺に絶賛片想い中なん?」

「そうだよ、あーあー早くフリーになってくれたら、にゃ?」

ゴッ殿が秘密を抱き締めよしよししてる。

「俺の隣の事は、い・わ・な・い。様に出来ないん?」

猫さんが苦しそうにテレポートで逃れてユルシの方に寄って来た?いや、ゴッ殿お姉ちゃんから距離取っただけったよ。

「分かったよゴッ殿。」

「分かったん?そーなん?」

「そーなんだにゃ!」

猫さんとゴッ殿お姉ちゃんのやり取りを見た後におじさんが神妙な面持ちで、猫さんに頼み込む。

「秘密、ユルシちゃんが困った時は助けてあげて。」

「分かったにゃ!」

「おじさん、ユルシは何に困るの?」

「それは実際困ってみてから、体感するしかない。」

「それまで分からないの?」

「魔法使いだったら誰もが通る道だよ。」

「分かったよ。」


そこにゴッ殿が割って入る。

「そんなに困ったのならお人好しのアイツなら多分助けてくれる。多分だけど……」

「そうか、それは助かるどんな人?」

「俺の友達だよ?ファンサたんって名前。もうすぐシフトだから来るよ。」

「珍しい名前だな……」

「んあ、まあ悪い奴じゃないが、ちと大物だぞ?」

「大物?どんな風に?」

「あー、巨大宗教連合のアタマ張ってる。」

「はあ?まさか?〝純水の自由〟とかのバッタもんか?」

「いや?その……〝純水の自由〟のアタマだよ。」


あれ?おじさんが黙り込んだ。でも……テレパシー垂れ流しだから意味無いよ……


(困ったものだ。俺とゴッ殿と秘密は五分のキョーダイ分で、ファンサたんとやらはゴッ殿と友達……多分ゴッ殿がひた隠しにしてるゴッ殿の〝彼女〟だろう。弱ったなーこれどうするよ?〝純水の自由〟と言えば、世界最大勢力の宗教連合で、特にカルト宗教を強引吸収合併していってる組織だ。俺が教祖のカルト宗教団体マジシャンズなんかは格好の的だろう。)


おじさんは馬鹿正直な所しかないよ……

「おい、キョーダイ。何電波飛ばしてたん?カルト宗教団体マジシャンズ?ファンサたんに会ったらまずい?……逆に考えたらどーなん?」


気まずい空気になったよ??


おじさんがユルシに帰る様に促した。ユルシも本能的に怖くなり家に帰る事にする。

「遅くなるから家にお帰り、万が一の時はここに電話しなさい。それか、このチャットサイトにアクマって名前で居るから、ゲーム機持ってたらチャットに来なさい。」

そう言っておじさんは電話番号を書いた紙とチャットサイトを見せてくれた。何これ楽しそう!ユルシゲーム機家にあるからやってみたい!


ユルシはおじさんに促されて一人帰った。


おじさん達は何か会議してるけど、喧嘩になって巻き添え食らったら、ユルシ死んじゃうもん。早く帰ろう。


†††


家に帰ってママに帰りが遅いと怒られた。ユルシはママに今日魔法使いになった事を報告しようとした。だけど、家に帰ったら急に怖くなった。でも、だけど……

「ママあのね?ユルシは魔法使いになったの。」

「またあのおじさんにあったの?ダメだかんね?変な子になっちゃ。」

「ごめんなさい。でも本当に魔法使いになったの!」

「はいはい、じゃあ、魔法を見せてみなさい。」

「雨の日しか使えないの。」

「天気予報だと明日雨だから、明日見せてもらえる?」

「うん……」

ユルシはあまり怒られずにおやすみの時間になった。ゲームはWi-Fiの設定がしてなくてチャットに行けなかったから、そのままおやすみした。


†††


朝目覚めると朝ご飯の食パンとベーコンエッグと牛乳を食べて、雨がザーザー降っているから傘をママに持たせられた。昨日言ってたのに魔法は見せなくていいのかな?

「魔法は見せなくていいの?」

「あ、そう言えば、そうだったわね?」

わたしは雨樋から滴る雨水が凍り付くイメージを持って短く呪文を詠唱する。

「アイス!」

すると、雨樋から滴っていた雨水が上から下まで凍り付き、細い氷の柱になった。ママはビックリしてる。

「え?魔法!?」

「わたしは魔法使いだよ。」

「ママとの約束はどうしたの?魔法使いになったらダメって言ったのに!」

「ごめんなさい。でも、わたしが魔法使いになってしまった事は、もう、どうしょうも無いのママ!」

「あーもう何でこんな事に……あのおじさんの連絡先は知らないの?」

わたしはそう言えばおじさんから貰ったメモ紙を財布に入れていたのを思い出して、ママに渡した。

「ママこれ。」

「ん、この番号……あんにゃろ……」

「ママ?」

「ううん、かけてみるわね。」

わたしはママからちょっと離れた。ママが電話する時の決まり事でいつも、何て言ってるか聞き取れないくらい離れている。今もそうしてる。

ママがスマホを鳴らしてる。ちょっと経って出たみたいだよ。

「アンタねうちの子に何してくれたんだよ!」

「いえ、お母さん落ち着いて聞いて欲しい。これには深い事情があって……」

ママが怒声を上げて、おじさんに文句を言っているよ……

「うちの子は普通の子なんです!元に戻してください!」

「それが出来るのは魔法使いに一人も居ないよ。落ち着いて聞いて欲しい。もう後には戻れ無い、前に進むか、負けて散るしか無いのが魔法使いの定めで……」

ママが怒号を張り上げて、おじさんに馬事雑言を雨霰をフルパワーで、フルスイングする。

「はぁぁぁぁぁ!アンタねうちの子になんかあったらタダじゃ済まさないかんね!この落とし前はどうつけるんじゃコラ!責任取れやゴルァァァ!」

「お母さん落ち着いて!今からそちらに向かうから……」

「誰がお前のお義母様じゃコラ!」

「誰もお義母様とは言ってな……」

「誰がお義母様じゃ!」

こうして、ママが一方的に通話を切って家の中に戻った。

ママはしゃがみ込み、ずっと泣いてた。わたしはママに嫌われたのかな?全然会話してくれなくなった。ただずっと、「何でなのさ!何でなのさ!」とヒステリックに泣き叫ぶママを抱き締めていた。

するとママのスマホに着信があった。多分タイミング的におじさんだろうなって思ってたら、ママが電話に出て、案の定おじさんだった。

「もしもし、アクマでもマジ!シャン!だが……」

「なんなのよ!ふざけないで!どこにいるんだよ!シバいちゃる!」

「今近くのコンビニに居るんだが家が分からないから家に向かいたいが、それは嫌だろうと思うから出来たらコンビニまで……」

「そこで待っちょれ!シバいちゃる!」

ママは怖い顔して一人でコンビニに行ったユルシはお留守番してなさいって言われたけど、ママが心配で後をつけたよ。

「ママ大丈夫かな?おじさんどうやって仲直り?するつもりなのかな?」

離れて後をつけてたらゴッ殿お姉ちゃんを見かけた?けど普段金髪なのに、何で桃色の髪をしてるのかなぁ?

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