最終話 ニート小説家

 夏が通り過ぎようとしていたのに、小さなラーメン屋の前では「冷やし中華はじめました」という旗が軽快に揺れていた。

 大きな県道の脇に続くつつじの植え込みで、痩せた猫が一匹、ぐったりと横たわっていた。表情は疲れ果て体は痩せこけていた。もう二度と立ち上がれないような弱々しさが漂っていたが、まだ呼吸は続いていた。僕はその猫を撫でようと思い、右手を出したが後方から自転車が走る音が聞こえたので、その手を引っ込めた。

 僕の足元もまた、ラーメン屋の冷やし中華のごとく素足に雪駄だった。長い時間歩き回ったものだから、鼻緒が足の甲にあたり、擦れてしまって両足共がヒリヒリと痛かった。

 

 家に戻り、部屋のソファに座ると、赤くなった足の甲に猫がすり寄ってきた。僕は猫の背を撫でながら、応募した小説がどう評価されているのかを考えた。

 すっかりゴミと化しているのだろうか、それとも驚くような高い位置を獲得しているのだろうか。


 定かではないその時間は、僕をまだ夢の途中に居させた。


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ニート少年 高田れとろ @retoroman

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