第5話ダスティンホフマンを初めて知ったのは、パピヨンのルイドガ役だった

ダスティンホフマンといえば、「卒業」「クレイマークレイマー」「レインマン」「トッツィ-」など名だたる作品に出演したハリウッドを代表する名優の一人である。

 数多ある、彼の作品の中で、なぜ私が、敢えてパピヨンに着目したかと言うと至極単純な理由で、当時中学生だった私が、一人で初めて観賞した映画が、「パピヨン」だったからである

 名古屋駅前の名鉄百貨店の確か6階に、名鉄東宝と呼ばれた映画館があり

ハリウッドの大作映画を中心に上映していた。

 中学生の子供が、一人で見るのには

少々小難しい類いの映画だったが、何を思ってかは忘れたが、数ある同時期に上映された作品の中から、自分の意思でパピヨンを見ようと決めたことを今なお鮮明に覚えている。

 そしてそれはハンセン病患者が強制収容される島だの、ギロチンでの処刑場面だの、かなり刺激的なシーン満載の、作品だったと記憶する。

 当時すでに30代後半だったであろうダスティンホフマンは、名実共に、スター街道をばく進中だった。

 しかしこの映画の主役は、あくまでスティーブマックイーンその人でありダスティンホフマンはただの脇役の一人に過ぎなかった。

 話の詳しい内容までは覚えていないが、パピヨンのスティーブマックイーンと、ルイドガ役のダスティンホフマンの別れのシーン、絶海の孤島の、空と海の群青の色は、それが他の作品と比べ取り立てて素晴らしかったわけでもなかろうが,何故か今なお脳裏に、焼きついて離れない。

 最後まで脱走に執念を燃やすパピヨン、土壇場で思いとどまるドガの、何ともいえない憔悴しきった表情。当時からすでに彼の演技力は、ただ者ではなかった。

 子供ながらにダスティンホフマンの演技に感動を覚え、エンドロールが終わり館内が明るくなった後も席を離れることが出来なかったことを思い出す。

 そしてそんな私にとって、一番ダスティンホフマンの存在を印象ずけたのが、確かパンフレットに書かれていた彼の紹介分のエピソードである。

 無名時代が長く続き、俳優の道を諦めかけた彼が、台詞もないような端役で、いくらかのギャラを得た時に、空腹を満たすのに何か食にありつくべきか?チャンスをモノにするために、衣装を新調するか、悩んだ挙げ句後者を選択し、それが効を奏して、今日があると言った内容の文だった。

 当時のレートですでに憶の出演料を得ていた彼にも、1日の生活費にも事欠く時代があったという内容に、今みた映画の内容とは別の親近感を得たことが思い出される。

追記

 真夜中のカウボーイの、びっこで肺病みのラッツオ役の彼も相当にイカしていた。

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あの頃私も若かった 狼少年源 @9770

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