読み始めてまず「避けるチーズ???」となり、途中出てくる虫の名前に困惑し、先の見えない展開に何度か挫折しそうになりながらも、それでも読むのをやめられなかったのは作者のすさまじい文章力に拠っています。脳内で「???」のマークが躍っているのにすらすら読めちゃう地の文、しっかりした世界観で本気か悪ふざけか見分けのつかない単語がいくつも登場する。でも、また今日も見に来てしまう……。"美しい文章"というものがあるとして、「ああこの人キレイな表現するな」と唸らされるのが上手い書き手なら、この作者はその上にいる気がします。本当にすごい書き手って、美しいものを美しいとすら感じさせない。それがわかってから注意して文章を拾っていくと、(自分が書き手だから余計に目についちゃうんですが)表現が豊かだし全然角がないしそれでいて個性もちゃんとあるしで、もう半分教科書のように読み進めました。そうすると今度は一転、物語が急展開して一気に深みを増し、「読んでよかったなあ」と心から思わせてもらえるラストへ。あのうた、素敵だなあ。すばらしいなあ。
推します。