怖い話15【火葬されなかった物】400字以内
雨間一晴
火葬されなかった物
「それ、なあに?」
まだ幼かった僕は、一人で暮らしていた祖父の、世話をしていた訪問介護員に、確かに訪ねたんだ。
「わ!びっくりした。お母さん達と、帰ったんじゃなかったのかい?」
「もうちょっと、ここにいるの。何をあげてたの?」
「あ、えっと、これはね、お薬だよ。お爺ちゃんが元気になるための。君もあげてみるかい?」
「うん、元気になってね、おじいちゃん」
僕は渡された薬を、認知症で寝たきりに近い状況の祖父の口に与えた。
「噛まないように、すぐ水を飲ましてあげるんだよ」
「そうなんだ」
介護員は優しい顔で水を飲ませていたのを覚えている。その顔を忘れる事は無いだろう。
「けんくーん?帰るよー?」
「いまいくー。またねおじいちゃん」
また祖父に会えると疑わずに帰ったんだ。
三日後に祖父は亡くなった。
火葬された後に、小さなお薬が大量に残っていた。
パチンコ玉の半分程の鉄球だ。あの介護員は失踪して、未だに見つかっていない。
怖い話15【火葬されなかった物】400字以内 雨間一晴 @AmemaHitoharu
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