第51話 アラクネクイーン

アラクネのあんまりな姿を見たショックから立ち直り、本来の目的のため気は進まないがアラクネの腹を裂いて糸を採取しようとしていたら次なる敵がこっちへ向かってきた。


「どうやらアタイ等は運が良い。アラクネより強い気配がする。おそらくアラクネクィーンだよ。高級素材が向こうからやってきてくれたよ。」


俺の魔力感知と命力感知もアラクネより大きな魔力と命力を持つものを捕らえた。


アラクネクィーン、アラクネの女王。


アラクネの実態を見る前だったら俺の心も激しく躍っていただろう。


かつてはアラクネは美しい女の上半身を持った魔物だと考えていた。


しかし、実際は昆虫の外骨格で作った女性型のマネキンだったのだ。


これはジャ〇に報告せねばならない案件だ。ウソ・大げさ・紛らわしい!


残念ながらこの世界には〇ャロはなかった。無念。


つまりアラクネクィーンはデッカイマネキンを引っ付けた蜘蛛なのでドキドキもワクワクもないのだ。


(ズドン)


「オマエタチ、ワタシノナカマ、コロシタ!」


激オコのマネキンクィーンさん登場!


どうやらマネキンクィーンさんはおしゃべりできるみたい。


「アラクネクイーンだよ。やっぱり今回はついてるね。これで良い服を作ってもらえるよ。」


サクラさんのなかではすでにアラクネクイーンとの勝負の決着はついているみたい。


アラクネクイーンとサクラさんが向かい合って構えている。


マネキンがサクラさんに勝てると・・・ッ!マネキンじゃない!


細長い足を生やした短くて柔らかい毛に覆われた大きな蜘蛛の下半身が鎮座しているのはアラクネと一緒だ。


サイズはアラクネクイーンのほうが一回り大きい。


ただ上半身は全く違う。


アラクネの上半身は外骨格で出来たマネキンだったがアラクネクイーンは違う。


アラクネクイーンの上半身は所々外骨格で覆われているが間違いなく美女だった。


キリっとしたちょっとキツイ感じの大きな目に背中に流れる赤い髪。


仙が優しげなお姉さんだとしたらアラクネクイーンはキツイ感じのお姉さんだ。


胸部装甲も仙に勝るとも劣らないりっぱな装甲だ。


「キ、キ、キター!!!!」


ヤバ、下げた後の上げなのでテンションがおかしくなっている。


「な、な、なんだ。急に大声出すなよ。アラクネクイーンが目の前にいるんだぞ。」


サクラさんだけじゃなく、アラクネクイーンも俺の声に驚いている。


お陰でアラクネクイーンがこちらの隙をつくことができない。


「スゥーハァー、スゥーハァー。すまん、ちょっと予想外のことにビックリしただけだ。」


フフ、フフフ。


まさかあのアラクネからこのアラクネクイーンが生まれるとは。


スキル詐欺にあったばかりでついてないと思ったけど、ついてる、ついてるよ俺。


人間万事塞翁が馬だ・・・ちょっと違うか。


アラクネで下げたあとにアラクネクイーンで上げてくるとはやるではないか。


俺のやる気は天井知らずですぜ。


「ヒャッハー!」


『旦那が世紀末のザコキャラになったっす。』


「だ、大丈夫か?」


大丈夫だ。ちょ~っとやる気が漲っているだけだ。


アラクネクイーンはあんでっと化スキルで仲間にするのは決定だ。


あんでっと化スキル使用時に身体を修復できるけど仙みたいに思わぬ現象が起こるかもしれない。


その対策として今回は修復の必要性をできるだけ排除したいのだ。


だからできるだけ原型を保ったまま倒さないといけない。


初手は小技で様子見だ。


「《メタルウィップ》」


変化スキル(※何度も言いますが変態スキルです。)で金属に変化した触手をいくつも作り出しアラクネクイーンを嬲ってやる。


『遂に戦闘にまで変態性を発揮してるっす。』


違う、違うぞ。アラクネクイーンを傷つけずに倒すには打撃系の攻撃が有用なだけだ。


「カベ。」


アラクネクイーンが言葉を発すると同時にアラクネクイーンの身体から魔力が地面に向かって放たれる。


俺とアラクネクイーンの間に巨大な石壁が出現した。


「石ごときで俺のメタルウィップが受け止められるか!」


複数の金属と魔力で強化された触手を石壁に叩きつけ粉々に砕く。


その向こうにアラクネクイーンはいない。


だが俺の魔力感知はアラクネクイーンの動きなどお見通しよ。


「《ウィンドボム》」


バーストを使ったらアラクネクイーンに大きな損傷を与えそうなので今回はウィンドボムを頭上に放つ。


「ギャ。」


石壁の陰から飛び上がっていたアラクネクイーンを吹き飛ばす。


「ヤリ。」


再びアラクネクイーンが言葉を発すると今度は地面から複数の石の槍が地面から俺とサクラさんに襲いかかる。


魔力感知で魔力の流れが見えているので避けるのは容易い。


「助けがいるかい?」


サクラさんも流れるような体捌きで踊るようにかわしてゆく。


さっさと終わらせないとサクラさんがアラクネクイーンを倒してしまう。


倒すこと自体は問題ないんだけど、アラクネクイーンは原型を留められるかな。


何となく心配だ。


だからこう言うしかないのだ。


「すぐ終わらせます。」


さてさてどうやって倒そうかな。


倒すこと自体は簡単だけどあんでっと化のことを考えると難しい。


「レンソウ。」


三度アラクネクイーンが言葉を発すると今度は石槍からさらに小さな石槍がいくつも飛び出してくるが俺もサクラさんもその程度の攻撃は全く問題ない。


「あ、そうか。大事なのは上半身だけだ。」


原型を留めてほしいのはアラクネクイーンの上半身だけだ。


つまり下半身は少々ボロボロでも問題ない。


まずは飛び回るアラクネクイーンの動きを止めよう。


「≪エアハンマー≫」


複数のアラクネを地面に叩き付けた魔法をアラクネクイーン一人を対象にする。


「グガ。」


地面に落ちたアラクネクイーンにエアハンマーを連続で発動して地面に縫い付ける。


「これで終わりだ≪多段螺豪突き≫」


俺の身体から生まれた鋼鉄の槍が魔力を渦巻いてアラクネクイーンの下半身に襲い掛かった。

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エロスライムは異世界を救う~最強の力は妄想力のようです~ kage3 @katayosi

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