タモン様とシャチョーが予言をっ

 


「それで、宝石一個で天気予報を聞いたんだ」


 すっかり場に馴染んだ駿が、一緒に食べながら、さっき会ったという占い老婆のことを語っていた。


「この先、暗雲が立ち込めるって、天気予報じゃないと思いますが……」

とラドミールが言い、


「俺たちの宝石ーっ」

と野盗が嘆いた。


 だが、駿は彼らの叫びなど、まったく意に介さず、野盗たちが焼いてくれた肉を食らい、

「美味いな。味付けがいい」

とイラークを褒め、


「美味いな。外側の焦げ具合とパリパリ感がたまらんな」

と野盗たちを褒めた。


 別に褒めて欲しいわけではないんですが。

 最初は私たちもその肉、グルグルしてたんですよ~と思いながら、未悠が駿を見ると、駿は、


「そういえば、この世界はあれか?

 兄妹で結婚してもオッケーか」

と訊いてきた。


「駄目だと思いますよ……。

 そんなことより、未来に暗雲が立ち込めるってなんなんですか?」


 なんでそんな不吉な予言を引っさげて現れるんですか、と思いながら、未悠は駿に訊く。


 ちなみに、未悠は駿の斜め前。


 アドルフは駿の前で、未悠の横。


 駿の横にはラドミールが座っている。


 未悠は、


 ……ラドミール。


 完全に社長の秘書みたいになってるけど、大丈夫?

と思い、


 堂端さん。


 社長にろくな挨拶もしないまま、ヤンと一緒に、野盗とリチャードさんの冒険譚を聞いてますけど、大丈夫?

と思いながら、駿の話を聞いていた。


 サラダの中から野菜を避けるようにして、的確に鶏肉だけをフォークで突き刺し、

「宝石一個やったのに、悪い占いをしてくるとは、ロクな占い師じゃない」

と駿は愚痴っているが。


「いや……、金額でくつがえるのなら、それはもう、占いでも天気予報でもないと思いますね」

と未悠は呟く。


「ところで、なんで私のマント着てるんです?」

と未悠が訊くと、


「お前の匂いがするからだ」

と駿は突然、可愛らしいことを言い出した。


 チラ、と未悠は横目にアドルフを見たが、アドルフはわざと目を合わせず、聞かないフリをしている。


 ……お、王子の前でやめてください、お兄様、と未悠が青くなったとき、ラドミールが言い出した。


「こうして見ると、シャチョーと未悠は……。

 失礼、未悠様はよく似ていますね。


 でも、アドルフ様と未悠様は似ていない」


 向かい合って座ったことで、マジマジと三人を眺めていたようだ。


「いや、顔よりも、雰囲気というか。

 たくましさがですが。


 見知らぬ世界に飛んできたのに、いきなり馴染めるこの感じというか」


 確かに。

 むしろ、アドルフ王子の方がよそから飛んできたんじゃないかと思うくらい、社長の方がこの世界にもこの食堂にも馴染んでいて、堂々としている、と未悠も思っていた。


 そして、ふと気づけば、タモンが駿の側に来ている。


 黙って見下ろしているタモンを駿は、なんだ? と見上げる。


「いや、初めて会ったときから、思っていたのだ。

 なにかお前を見ると、ゾクッと来ると」


 そんなタモンの言葉を聞いた駿が笑って言う。


「俺もだ。

 お前を見た瞬間、こいつはっておかねばと思ったんだ」


「タ、タモン様とシャチョーが予言をっ」

とヤンが慌てて言うが。


 いや……、タモン様はともかく、社長のは予言じゃないんじゃ……と未悠は思っていた。


 なんだか知らないが、お互いがお互いを気に入らないようだった。


「ところで、社長。

 なんでこっちに飛んできたんです?」


 改めて未悠はそう訊いてみた。


「いや、それがお前が消えたあと、気になることがあって、昔俺たちが発見されたとき着ていたという服を探しに行ったんだ」

と言って、社長は今、着ている白いマントを翻し、胸にある金の紋章を見せた。


「俺の記憶は正しかった。

 俺たちがあの花畑で発見されたとき着ていたという青いマントと赤い小さな服。


 そのどちらにも、これと同じ金の紋章が刺繍されていた」


 ええっ? と聞いていた皆が声を上げる。






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