お前が元凶か


「双子?

 ああ、男の双子が王族に産まれると、どっちが兄かで揉めるからな。


 あまりよくないとは言われていたな」


 そんな風にぼんやり語るタモンの時代には、まだ、双子を異世界に飛ばす風習はなかったようだった。


「私のときも、先に産まれた方が兄だ、いや、後に産まれた方だと揉めたらしいぞ」

とタモンは笑って言ったが、未悠はその言い方が気になった。


「……私のとき?」


「私と兄は双子なのだ、本当は」

とタモンは言い出した。


「ややこしくなるから、兄を兄と定め、私は一年間隠されて。


 遅れて産まれたことにされた。


 兄とは顔もそんなに似ていなかったし。

 誰も疑わなかったぞ」

とタモンは言う。


 二卵性の双子だったんだな、と思いながら、未悠は訊いた。


「あのー、そのとき、どうして、お兄様の方が兄と決まったのですか?」


 簡単な話だ、とタモンは言う。


「兄の方が父と似ていたのだ。

 私は母似だった」


 王の血筋を重んじると言うことか、と思ったのだが。


「兄の方が、顔が王様っぽい、という理由で兄となり、将来の王となることが約束されたのだ。

 私は母親似の女顔だったからな」


 ……この国は昔から、こういうテンションだったのか、と未悠は思った。


 なんというか、ざっくりだ。


 それにしても、タモン様に似た母君という人は、さぞかし美しかったのだろうな。


 そう思いながら、未悠はタモンに確認する。


「でも、結局、タモン様は兄嫁様と揉めて、殺されるはめになったんですよね?」


「そうだな。

 間で一回、目を覚ましたときに聞いたのだが。


 それで、やっぱり双子は不吉だと言われるようになり、王族に双子が産まれたときには、なんらかの対策を立てることになったらしいぞ」


 軽い口調で言って、ははは、と笑ったタモンに向かい、未悠は思わず、言っていた。


「……お前が元凶か」





 未悠も堂端も居なくなってしまった。


 駿は休みの日、知り合いのツテをたどり、ある廃屋の物置の中に居た。


 ガサガサと中のものをひっくり返すうちに、それを見つける。


 赤と青の布。


「……あった」

と駿はつぶやいた。


 あれを見たとき、何処かで見た気がしたのだ。


 未悠が置いていった白いマントに刺繍されていた金の紋章。


 昔、自分たちが育った施設で見た気がしたので、もしやと思って園長の遺族に頼み、まだ残っていた園の荷物のある物置を見せてもらったのだ。


 青い布、と言われたものは、マントのようだった。


 青いマントと赤い小さな服。


 そのどちらにもあの金の紋章が刺繍でほどこされていた。




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