他人だからこそ、わかる真実

 



 社長をよろしく、と言って出て行く未悠を堂端は見送っていた。


 何処に帰ってくんだろうな、こいつ、と思いながら。


 何処って――


 異世界か。


 異世界ってなんなんだ?


 俺が異世界のなんとかいうのに似てるとか言っていたが……と考えかけたところで、その思考はフリーズする。


 想像出来る限界を超えていたからだ。


 ただひたすら勉強して真面目に生きてきて、会社に入ってからも、そのまま同じようにやっていたら、社長に気に入られて、秘書になった。


 大丈夫だ。


 俺の人生、間違ってはいない。


  イセカイとやらがなんなのか、想像できなくとも、と思ったとき、社長室の扉が開いた。


「未悠」

と彼女の名を呼びながら、駿が顔を出す。


「堂端、未悠はもう帰ったか」


「私が貸した金をつかんで、走っていきました。

 コラーゲンを買いに」

と言うと、駿は、


「……すまない」

と言って、すぐに未悠に立て替えた金を返してくれた。


 ありがとうございます、と受け取りながらも、堂端は言う。


「私が借したら、返しに戻ってくると思ったんですが。

 社長から取り立てろと言われました。


 社長にヘソクリまで取り上げられているからと」


「人聞きの悪い。

 うちに来れば置いてあるのに」


「入ったが最後、タダでは出られない気がするからじゃないですかね?」


 俺が女でもいかないな、と思っていた。


「……海野は、異世界に帰ったんですか?」


 気にすまいと思っているのに、まだ、異世界が気になっていたので、つい、そう訊いてしまう。


「そうなんだろうな。

 行き来するすべを身につけたのか」

と言ったあとで、駿は渋い顔をした。


「異世界か」

と呟いたあとで、


「魔王をあと少しで倒せたのに」

と言い出す。


 この二人、やっぱり兄妹なんだろうな、となんとなく思った。


 なんだか、この兄にして、あの妹あり、という感じだからな、と堂端は思っていた。



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