実は……
「実は……
ハードランド伯爵に求婚されたのです」
とエリザベートは語り出す。
ああ、そういえば、いつぞや、男やもめの伯爵様が熱い視線でエリザベート様を見ていたが、あれかな? と未悠は当たりをつける。
確か、渋い感じのなかなかの男前だった。
「タモン様を前に恥じらう私を見て、可愛いと思われたとか」
と少し照れたように言うエリザベートを見ながら、
あれ、恥じらっているのですか……?
と思ってしまう。
小馬鹿にして、高笑いしているようにしか見えないのですが……。
「まあ、今、こそこそ着飾ってみていたエリザベート様は確かに可愛らしかったですけどね」
とうっかり言ってしまい、
「……未悠。
いつから見ていたのです……」
と睨まれる。
ひい。
拷問部屋が近づいてきた気がする、と未悠は後退したが、エリザベートは、
「伯爵になんと返事をしたものかと困って、ユーリアに相談するため、手紙を書いたら、私の衣装部屋を開けていいわよ、と言って、この鍵を送ってきてくれたのです」
と衣装部屋の鍵を見せてくる。
なるほど、と未悠はその小さな鍵を見て思った。
王妃様は、親友に幸せの訪れそうな気配を感じ、協力しようとしたのだろう。
「エリザベート様っ。
私も協力致しますっ」
と未悠はエリザベートの手を握る。
「この世界に来てから、ずっとエリザベート様にはお世話になってきました。
なにか恩返しがしたいのです」
だが、エリザベートは、
「私への一番の恩返しは、貴女が立派な王子妃となることですよ」
と言ってきた。
「エリザベート様っ。
なに硬いこと言ってるんですか!
王室のことばっかり考えてないで、自分の幸せもつかむべきですっ。
そうだ。
美容のために、早く寝たほうがいいですよっ」
今、いそいそとお洒落をしてみていたことから言っても、ハードランド伯爵のことは満更でもないようだった。
「未悠っ。
この話、他言無用ですよっ」
というエリザベートの声を聞きながら、
「もちろんですっ。
おやみなさいーっ」
と言って、未悠は急いで王妃の間を出た。
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