第30話 覚悟を迫る
「お、ケン。来たんだね」
「ああ、そろそろ店番しないとな」
占い研は相も変わらず、部室である化学準備室で部誌を売っている。店番は持ち回りで特にシフトは決めていないが、スマホで連絡を取りつつ上手くやっていた。
あのあと、海田から聞いたことをいろいろ整理した。しかし、まだ決め手が足りていなかった。
仮に海田から聞いたエピソードが全部本当だったとして、最近の小冬の行動とは結び付かない。
なにか、決定打になるものはないだろうか……。
「部誌、結構出ているよ。小冬ちゃんの表紙が効いたみたいだ」
「ああ。俺も廊下で持ち歩いている奴を何人か見つけた。戦略勝ちだな」
出来上がった部誌は、高校生が出すものとしては申し分のないクオリティになった。ツネが上手くレイアウトを整えてくれて、本としてかなりまとまった形になったと思う。
俺はそれを手に取り、眺める。
描かれた狐。手に持った画面。その四つの小窓をトントンと順に叩き、思考する。
クラス代表の立候補、縁日の主張、部誌の制作、Tシャツの監修、お化け屋敷……。
「……っ!」
まさか、そういうことなのか?
でも、わからない。どうしてそんなことをする必要がある? だってあいつは……。
ぐるぐると、過去から今までに至るすべての記憶が俺の中を駆け巡る。
絶対にない、あいつに限ってそんなことがあるわけない。
……本当にそうだろうか。
小冬といた時間を思い返せば思い返すほど、ありえないことではないと思った。
行かなくては。ああそうとも、今日はそういう日だ。
「今、小冬がどこにいるか知ってるか」
俺はツネに訊ねた。
占いは、『決断せよ』と俺を急かしていた。
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