一睡夢 一期栄華 一盃酒

……とはその男の父の宿敵の時世の区であり、また別の天敵は人間夢幻の如くと謳っています。

戦国武将たちにとって、己が人生とは今以上に現実と夢との戦いであったのかもしれません。
男子たるもの、頂点を獲るこそ本懐。しかしながら領地や天候、時流といった問題は必ずついて回り、その対応に追われます。

恵まれた智勇を持ちながらも、ついに天下に届かなかった男、武田信玄は、その最たる代表ではないでしょうか。
これは、一つの時代の終わり、その息子勝頼による父の夢現の回顧。
「瀬田に武田の旗を立てよ」、この遺言の真に意味するところとは……?

「過去を振り返らず前だけを目指すも良い。過去に学び倣っても良い。但し、己が目の前の現実に振り回されるな」
という作中の言葉こそ、我々にも相通ずるところがある箴言です。