王国首都郊外の農場付近(農道1)

「なんだありゃあ?」


 マンハイム王国陸軍技師長が頓狂とんきょうな声を上げる前から、アウィスは異変に気付いていた。


めてください」


 アウィスはそう言って、やはりドア側に座るのが基本だなと思いながら、輸送車が停車するとドアを開き、トンと足をそろえて身軽に飛び降りた。


 手には愛銃がある。このところ活躍の場がなかったが、許される限り肌身離はだみはなさず持ち歩いている。大事な彼の相棒パートナーだ。


 狙撃銃の光学照準器オプティカルスコープのカバーを上げ、〈農場ファーム〉を見やるアウィスの横で、よっこらせと遅れて降りてきたマンハイム技師長が目を細めた。


「こんなところでドンパチかよ。首都の目と鼻の先じゃねぇか」

「ヴァルシュタット中佐が孤立こりつしているとのこと!」


 運転席側のドアを開いた兵士が、体を乗り出してさけんだ。左手で体を支え、右手には通信機のレシーバーをにぎっている。


「なんだってまた、中佐どのがこんなところへ? 〈狩人かりゅうど〉さん見えるかい? やっこさん、ずいぶんお困りのようだ」


 ここからの距離では人間は豆粒まめつぶのようだ。夕暮れで視認が難しくなってくるこの時間帯は、なおさら識別が困難だ。普通の兵士ならば。


 アウィスは一瞬考えてから、マンハイム技師長と無線機を持った兵士を見た。

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