王国首都郊外の農場(母屋入口付近2)

「なに? 発砲してはならない? そんな馬鹿な……えっ? 〈狩人かりゅうど〉が!? 了解」


 先ほどから、通信機でどこかとやり取りしていた通信兵が、ちょうどその場で唯一の士官だったレティシアに声をかけた。


 そして、いまの通信の子細しさいを報告する。


「そんなことが……」


 レティシアは怪訝けげんそうにまゆをひそめながら耳をかたむけていたが、通信兵の口から再び〈狩人かりゅうど〉という言葉が出たとき、顔つきが真剣なものへと変わった。


 そして、うなずくと良く通る声で命じた。


が許可あるまで、一切の発砲を禁ずる! 厳命げんめいであるっ!!」


それはまぎれもなく、えある王国軍士官の姿だった。


 その場に居合わせた王国空軍兵たちは、直属の上官でもない少女(いちおう王国空軍少尉ではあるのだが)の命令に、なんら違和感がなかった。


 それはきっと、若かろうが、女だろうが、新参者だろうが……そんなことには頓着とんちゃくすることなく、レティシアに流れる王国軍士官を数多く輩出はいしゅつしているヴァルシュタット一族の血が成せる技であったろう。

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