王国空軍首都部基地(王国空軍士官用宿舎)

 深夜になっても風はおさまることを知らずあらしとなって、軍用空港に併設へいせつされた王国空軍兵舎のとある士官室の窓をらしていた。


 窓の近くに置かれた椅子いすには、飛行服を脱ぎ、下着姿の肩に夏季用フライトジャケットを羽織はおったこの部屋のあるじ、レティシア・ヴァルシュタット王国空軍少尉がいる。


 飛行靴ブーツを脱ぎ、ひざを抱えて腰掛けていて、白いすらりとしたあしシルエットがジャケットのあわせからのぞいている。


 その頭部にはすでに飛行帽はなく、われて押し込まれていた長髪がこぼれている。


 十分に明るいとはいえない室内灯しつないとうでも、レティシアのあざやかな金色の髪がきらめいている。


 そして、その士官用の一室にしつらえられたテーブルの上に、ふうかれた特別な命令書が置かれている。


 弱い室内灯の光でも命令書のふう、その王家の紋章・・・・・が浮き立って見える。


 彼女のあおい瞳は、窓外《そうがい)の吸い込まれそうな闇に向けられ微動だにしない。


 何かを決意したかのような強い視線、整ってはいるが強情《ごうじょう)そうな唇《くちびる)がガラス窓に映(うつ)っている。


 それはまるで、彼女自身を咎《とが)めているかのようにも見えた。

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