とある高地6
上空からの
共和国軍に戦闘中止の信号弾が撃ち上げられ、余力のまったく残っていない王国軍は追撃することもできず、帰るのならどうぞお帰りくださいという状況になったのだ。
ただ、
しかし、これも戦場の混乱のなか仕方がなかったことかもしれない。
* * *
誰がどう決着をつけたのか知らないが、共和国軍からは遅れたものの本国より通信があり、王国軍にも戦闘中止の命が下った。
高地の王国陣地では、負傷者の手当をする者、
暗闇の中、例の
華々しい戦歴が宣伝となる
そこへ、軍曹をはじめとした王国陸軍の
オウルがアウィスの顔を見ると、アウィスは黙って首を振ってささやいた。
「ずいぶんと
「見送りを頼んだ覚えはないゼ」
オウルが小声でそういうと、軍曹が敬礼して、ほかの兵たちもそれにならった。
暗闇の中、兵士たちの目がふたりの〈
ふたりの〈
「じゃあな」
オウルの唇がそう動き、アウィスが全員の顔を見てからうなずくとふたりの〈
* * *
「苦労をかけてしまったようだな。よくやってくれた」
「いいえ。その程度で済んで幸いでした。同志コドロフ」
副官に
〈
自身の安全ということに関しては極度に敏感なアレクサンドルは、いきなり真っ昼間のようになって棒立ちとなる周囲の将兵の誰よりも早く身を伏せようとした。
それがアレクサンドルを救った。
アウィスが放った一撃は、アレクサンドルの
もし、あのまま棒立ちだったら、きっと胸に大穴が開いていたことだろう。
暗殺とは違い
副官の報告によれば、アレクサンドルが意識を失った後も攻勢を続けたが、王国軍輸送機からの機銃掃射による援護で持ち直した王国軍陣地は
「“政治”か……」
アレクサンドルは「いつまで、我々は政治屋の駆け引きの道具にされ続けなければならないのだろう?」と気分が落ち込む自分を意識した。
まあ、今はよしとしよう。
「お互い。また生き残ったな」
アレクサンドルは副官に言った。
* * *
翌朝、王国陸軍の軍曹とアレクサンドルが王国軍撤退の手順を打ち合わせることとなった。
本来、将官同士で行われる
「昨晩、機関銃手を
アレクサンドルは一通り確認事項を消化すると、軍曹に
「さて、大戦時ならいざしらず、現在の王国陸軍には少年兵はおりませんが……」
はぐらかすつもりか……そういえば、〈
たしかに、周囲の人間には〈
でも、アレクサンドルには予感があった。
私が、そして〈
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