ep1.5:インターミッション

彼の者の名は

「が、っは――ぜっ、つ、着いたのか……?」


 一人の男が、息を荒げて膝を突いていた。

 年齢の読み取りづらい風貌だった。

 外見に老いは見て取れないが、顔立ちに若者らしさもない。

 それ以上に、本来の印象が、極度の消耗に塗りつぶされている。

 

 顔面蒼白、頬はこけ、眉根には彫り込まれた苦悩。

 生きてきた命の意味、歩んできた時間の価値すべてを見失えば、人はこのような表情になるだろうか。


 その身を覆うのは、不気味に歪んだ漆黒の板金鎧プレートメイル

 それはどこか、『神聖武装』に似ていた。


「はぁっ、どこだっけ、ここ……俺はいま、……」


 譫言うわごとめいてつぶやきながら、男はようよう立ち上がった。

 足を引きずるように歩き出す。

 絶望を背負ったまま。


小夜李サヨリ……すまねえ……ずっと一人で、苦しい思いを……」


「桂湖……柚乃ユノ……なんで俺の手で……鬼かよ、ちくしょう……」


「薊……無駄なんだよ……全部、無駄だった……」


「ちくしょうが…………っ!」


「桂湖、なにしてっかな……。会いには……行けねえか……。はあ、やってらんねえ……」


 彼の名は、『超刻騎神クロノスライダー』。

 かつての名は捨て去った。

 と会うために。


 運命を変えるために。

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転生、ダメ。ゼッタイ。 豆苗わかば @catfist

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