第897話 「紹介Ⅲ-Ⅵ」

 ユルシュル


 ザンダー・トーニ・ザマル・ユルシュル


 ウルスラグナ騎士国初代国王(自称)。

 将来的にはウルスラグナを統一してユルシュル騎士国にするつもりだった。

 元ユルシュル領領主。 ユルシュルは騎士の家系と領内に騎士の養成学校を抱えていたので、割と優秀な騎士を何人も輩出してきた名家。 その為、ウルスラグナの歴代国王から優遇されていた。


 外敵も仮想敵国も存在しないウルスラグナでは、非生産階級の騎士はあまり使い道がないのだが各領主への貸し出し――要は警察機構のように機能させる人員は必要だったので、それなりにではあったが需要はあった。

 その為、ユルシュルは重宝されて来たのだが、結果としてそれが現在の凋落を招く事となる。


 彼だけに限った話ではなく、歴代のユルシュルのトップは優遇により徐々に傲慢な性格へと変貌していき、それは子に受け継がれ徐々に家風そのものを歪めていった。

 当初は忠義は騎士の誉れと言った考えを抱いていた者も居たが、気が付けば力こそが正義と言った思考にすり替わっていく。 つまるところ捻じ伏せれば全ての意見は罷り通ると言う事。 そして幸か不幸か今まではそれで上手くいっていた事が現状に拍車をかけた。

 

 外でもそんな調子なので、身内に対して使い分けると言った事は不可能となり、思い通りにいかなければ暴力で躾けると言った行き過ぎた折檻が横行。 長年晒され続けた子も、代替わりと共に全く同じ行動を取るようになり、今に至る。


 こうして出来上がったのは頭を一切使わない殴り倒せば勝ちと言った支配階級に適さない性格の領主。

 それでも長年積み上げて来た武は本物で、騎士としては優秀な者が多かった事も扱いが難しかった原因だった。 そんな事が積み重なり、今となっては忠義のちの字もない馬鹿の集まりとなり、自分達は強いと言った肥大した自意識が敗北を敗北と認識しない思考形態を生み出した。


 勝てば正義と認識しているにもかかわらず敗北を認められないと言った歪みが、ユルシュル当主に与えられた呪いなのかもしれない。

 ちなみに息子のゼンドル、ゼルベルがトップになった所で彼の下位互換になるだけで、何も変わらず、

更に下位互換の子供を生み出して終わりだろう。 つまりは都合のいい現実しか直視できない無能。

 

 王都での事件で国王が死亡し、国が荒れたタイミングで独立を宣言。

 近隣領を武力で併呑し、ウルスラグナを支配しようと画策したが、オラトリアムに喧嘩を売った結果、その計画は早々に頓挫する事となる。


 その後、ホルトゥナから提供された魔導書を手に入れ調子に乗った挙句、オラトリアムとアイオーン教団を同時に滅ぼそうと攻め込んだ。 当然のように負けたが。

 最後は滅ぼされる形で敗北する事となり、本人は囚われた後に公開処刑された。 死亡。 



 ゼルベル・ドゥアン・ユルシュル


 ユルシュル家次男。 ゼンドル、ゼナイドの弟。

 ほぼ同上。 ユルシュル王どころかゼンドルの下位互換。 つまり無能。

 父親と一緒に処刑された。 死亡。



 ベレンガリア・マルゼラ・ラエティティア


 ホルトゥナの首領。 二人の姉を出し抜いて見事にトップの座を手に入れた女。

 本名はロッテリゼ。 ラエティティア家は基本的に家族は出し抜く、または蹴落とす存在と認識されており、 母親の教育方針もそれに沿った物になっている。 技術や知識と並行してお互いに対する敵愾心を植え付ける所までが家の教育となっているのだ。


 元々、ラエティティア家は悪魔の召喚をメインテーマに研究しており、娘である三人は専門知識を叩き込まれはしたが、完全に物にした上、応用まで持って行けたのは長姉だけだったりする。

 次女と彼女にはそこまでの才能はなかった。


 ただ、代償として姉は他者とのコミュニケーション能力を養えなかったが。

 反面、彼女はコミュニケーション能力(特に異性)の才能はあったようで、体で篭絡して操る事を覚えた後は順調に勢力を拡大していった。 姉たちの部下を切り取り、自分の勢力を拡大し、ついでに姉の研究成果を掠め取ってグノーシスに売り飛ばす事で最終的にトップとしての地位も確立。


 そこまでは上手くやっていたが、姉の排除をかけたフシャクシャスラ戦を皮切りに始まる予定だったリブリアム大陸の統一辺りから様々な事柄が上手く行かなくなって焦り始めている。

 ユルシュルが壊滅した事により本拠として利用しているクロノカイロスへ撤退。 現在は今後の身の振り方について考えている。


 エルフ


 ブロスダン


 エルフの王(傀儡)

 肩書こそユトナナリボに存在するエルフの王だが、実際はグリゴリに操られているだけの傀儡。

 以前はヴァーサリイ大陸北部に存在したエルフの里に住むハイ・エルフだったが、グリゴリがローを取り込もうと干渉した結果、敵対となり里は壊滅。


 何とか逃げ延びはしたが、その後もオラトリアムによる執拗な追撃を受けて疲弊。

 その途中でアザゼルの干渉を受け、その傀儡となる事で生き延びる事が出来た。

 大陸を脱出した後、グリゴリにある事ない事を吹き込まれ、原因は自分にあると理解した事で精神の均衡が崩れかけたが、その後に里が消えたのは全てローが悪いと言う結論に至り、精神的に落ち着きを取り戻す。 その後、首尾よくユトナナリボに辿り着き都市を掌握。 アリョーナという妻も手にいれ、ついでに聖剣アドナイ・ツァバオトも手に入れ順調にグリゴリの傀儡として地盤を築き続けた。


 尚、グリゴリの傀儡なった際に彼等の技術で肉体を急速に成長させられ、ユトナナリボに辿り着く頃には見た目は少年から青年になっている。


 基本的にグリゴリの言いなりだったので、彼の王としての統率能力はユルシュル元王以下と非常に低く、剣の腕もアリョーナ以下と聖剣使いとしても作中最低ランクの雑魚。 そもそも人を率いる才能がない。

 目的しか見えておらずに手段を軽視していたので、全てにおいて大した事がない張りぼてのような男。

 ただ、見た目こそ威厳があるように見える程度の容姿ではあるが、中身が子供なのでグリゴリの言いなりのまま王として振舞い、そのまま周囲から認められた見方によっては憐れな存在。


 妻のアリョーナに関しては愛している以前に目的のための通過点程度の認識だったので、特に何も思う所はなかった。

 グリゴリの言う通りに聖剣を手に入れ、グリゴリの言う通りに大陸の魔物の掃討を行い、グリゴリの言う通りに辺獄と戦い、在りし日の英雄を滅ぼした。


 全ては復讐の為。 その甲斐あってか仇と遭遇できたが、その異常な精神性をまざまざと見せつけられ恐怖を抱く。 それにより復讐心ですら中途半端と言う事が露呈。 結果としてグリゴリと一緒に魔剣の怒り(極大)を買って極伝の発動を誘発。 完膚なきまでに粉砕され、ついでに妻の愛を理解したと同時にその妻を血煙に変えられて絶望。 最後の最後で聖剣を逃がす事で一矢報いたが、碌でもない人生を送らされて幕を閉じた。 ある意味一番の被害者かもしれない。 死亡。


 

 アリョーナ


 ハイ・エルフ。 ブロスダンの妻。

 聖剣エル・ザドキの担い手。 はっきり言って聖剣の担い手と族長の娘という立場を除けは、なんのステータスもない平凡なエルフ。 良くも悪くも普通の娘だったが、責任感は人一倍あったので王の妻として精一杯振舞おうと必死に努力した。


 ブロスダンを愛そうと努力し、彼の望む都合のいい妻として振舞おうと努力し、目的を達する為の手段として在ろうと努力した。

 健気に慣れない剣の訓練も必死に頑張った。(ちなみにブロスダンはやってないのでここで差が付いた)

 

 結局、里は滅び、必死に庇った夫はその後に死亡したので、彼女の努力は何一つ報われなかった。

 せめてもの救いはオラトリアムに捕縛されなかった事で、オラトリアムが齎す圧倒的な狂気に触れる事なく逝けた事だけかもしれない。 死亡。



 コンスタンサ


 エルフ。 ユトナナリボの住民A。

 ただただひたすらにグリゴリとハイ・エルフを信仰、崇拝して自分が偉くなった気でいる頭スカスカの勘違い娘。

 何も考えていないので、馬鹿や無能と言う言葉ですら括れない虚無の精神を持った究極のモブ。 もしかしたらボットかもしれない。


 ユトナナリボ戦後、斬首されて肉塊に埋め込まれ、グリゴリを召喚するだけの装置と化した。

 ちなみにグリゴリ様お越しくださいと真剣に祈らないと電流が流れて凄まじい苦痛に襲われるので、あの肉塊に埋め込まれた者達は必死かつ心の底から祈りを捧げている。


 まだ死んでいないが、終わったら死ぬ予定。 多分、もう出てこない。

 ちなみに首から下は畑の肥料になった。



 ラフアナ


 エルフ。 ユトナナリボの住民B。

 同上。 コンスタンサと一緒に仲良くグリゴリに祈りを捧げている。 その内に死ぬ。

 


 辺獄


 ?


 在りし日の英雄にして辺獄の領域――アパスタヴェーグを支配していた女王。

 辺獄の氾濫により、モーザンティニボワールへの侵攻が可能となったが、彼女自身が諦観に支配されていた事もあり、静かに事の推移を見守る事を決めていたが、懐かしい気配を捉えた事で動き出した。

 

 配下を使い、侵攻しようとしていた辺獄種を間引き、魔剣の担い手を待ち続ける日々を送る。

 

 結果として現れた存在は自分達の希望足り得ると判断し、後を託す事を決意。

 最後は希望――ローを庇い■■■■■■■■■の一部に貫かれて消滅。 今わの際に遺した言葉は約束として今も生き続けている。

 

 魔導書を使った後衛寄りの戦闘スタイルだが、能力を巧みに使って弱点を潰しているので並の相手では触れる事すら困難となる。 こと、魔導書の扱いに関しては他の追随を許さない。

 魔導書を用いた戦闘のエキスパート。 国を愛し、民を愛した英雄。


 魔剣ナヘマ・ネヘモス――第十の魔剣。

 アパスタヴェーグに封じられていた魔剣で、「物質主義」を司るその固有能力は「魔力の物質化及び変異」空間や自己生産した魔力を魔石や武具として物資化したり、形を与えて疑似生命体として使役する事が出来る強力な能力。 辺獄で使えば瞬く間に異形の集団や堅牢な砦を召喚できる。 欠点としては生み出した存在を行動させる為には思考で操る必要があるので、一定以上増やす事が出来ない。


 ローとの相性は悪くなかったが、どちらかと言うと守勢に長けた魔剣なので、攻める気質のある彼とはあまり噛み合わないので良くもなかった。


 

 ?


 在りし日の英雄にして辺獄の領域――フシャクシャスラを率いていた聖騎士。

 過去に発生したある出来事に責任を感じ、その償いと復讐の為に立ち上がった。

 恐らく負けるまで彼は止まらず、全てを滅ぼす為に進み続けた事だろう。


 彼の戦いは聖女の介入により早い段階で頓挫。 無念のまま力尽きる事となった。

 最後の最後まで仲間達の事を想い消滅した。

 

 権能使い――グノーシス教団で言う救世主セイヴァーの完成形。

 美徳だけでなく大罪をも扱う事が出来、全盛だった時に並列起動できる権能の数は十を越える。

 接近戦は勿論、権能による支援、自己強化、敵への弱体効果など、非常に戦闘の幅が広い万能騎士。

 器用貧乏とも取れるが、総合力が高いので隙のない戦闘スタイルは完成度が非常に高い。


 彼は騎士である以上、守るべき者があれば実力以上の力を発揮するだろう。

 その高潔さゆえに歪んだ悲しい存在。 平和を愛し、信仰を愛した英雄。


 魔剣リリト・キスキル――第九の魔剣。

 フシャクシャスラに封じられていた魔剣で「不安定」を司るその固有能力は「魔力現象の無効化」で魔力由来で発生した現象を無効化する。 魔法、権能は勿論、聖剣による強化も剥がせるので、魔力に頼った戦いをする者には覿面に刺さり、グリゴリなどの維持に魔力を用いている存在は近づくだけで危険な代物。


 ローに持たせるとこの先に現れる敵の大半が雑魚になるので入手は流れた。

 


 ?

 

 在りし日の英雄にして辺獄の領域――ドゥナスグワンドを守っていた拳銃使い。

 当時、非常に少なく、そして扱いの難しかった特別製の拳銃を異次元の領域で使いこなした男。

 基本的に中~遠距離が得意だが、太い銃身には銃剣が内蔵されており、接近戦もこなせる。 そもそも生きて近接を仕掛けられる存在はそう多くないが。

 

 適切な距離を保つ事が出来れば同格の英雄である、武者や飛蝗の転生者ですら完封できる凄腕。

 在りし日の英雄最強の一角。

 彼の扱うリボルバーは当時の技術の粋を集めた特別製で、内部に複雑な機構が組み込まれており、回数制限があるが転移を用いた瞬間装填により瞬時に弾丸を補充可能。

 

 だが、最も恐ろしい点は弾がなくても魔力を弾丸代わりにして発射できると言う点だろう。

 そして弾丸を用いた場合の威力は凄まじく、グリゴリの天使ですら一撃で消滅した。 特定の手段で威力をブーストする事も可能。 使い手の技量に左右されるが、極めれば最速の一撃となる。

 

 欠点は命中精度で、本来なら<照準>などを用いて命中補正をかけないととてもじゃないが当たらないのだが、彼はその技量のみで欠点を捻じ伏せた。

 寡黙ではあったが子供には優しかったので、彼を知る子供達は彼の背中に英雄の姿を重ね、憧れの対象として尊敬されていた。 子供を愛し、平穏を愛した英雄。


 魔剣ガシェ・アスタロト――第四の魔剣。

 ドゥナスグワンドに封じられていた魔剣で「無感動」を司るその固有能力は「効果範囲内の存在の思考を停止させる」と言った物で魔法道具などで防ぐ事は出来るが、まともに喰らえば完全に停止して元に戻らず、一瞬で廃人になる強力な能力。

 

 ちなみに「虚飾」の権能と併用すると手も触れずに範囲内の生き物を洗脳できるので、ローに持たせると凶悪性が激増する。

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