第22話 古の記録
「でも魔核が各地に出現したという出来事というのは、30年ぐらい前にも起こっていますよね。そして、更にさかのぼって今から50年前にも」
魔核が出現する事は、稀にある出来事なのだそうだ。今回の件があったので、魔核について調べてみたら判明した事実。
僕が生まれる前の話なので、人に聞き込みをして知った情報やら本を読んで記録を調べて得た情報。30年前にも、魔核の出現が起こっていたという記録があったのを僕は目にしていた。
モンスター増加や突然変異によって、各地で被害を被ったという出来事があったと記録に残されている。それから更に遡り50年前にも、魔核が出現したというような記録があった。こちらの方は、出来事の記録があやふやで事実かどうか定かではないが、調査を続けておそらく魔核が発生したというのは事実だと判明。
更に過去の記録を探していけば、何十年、何百年か昔に魔核が出現したという記録というのが、まだまだ残されているだろう。だけど。
「その魔核が出現した時に魔王が現れた、なんて話については記録に残っていませんでしたし、聞いたこともありません。なぜ今回の魔核が出現したという事が、魔王が現れる前兆だと思ったんですか?」
魔核の出現というのは、だいたい2、30年位の周期で起こる自然災害のような事だった。そして、魔核が出現したときに魔王が現れたなんて話は聞かない。そもそも魔王という存在が、おとぎ話だ。それを真剣に話しているベルントに、疑いの視線を向けてしまう。
「その疑問は当然でしょう。なぜ、今回の魔核が出現したという事が、魔王の現れる前兆だと思ったのか。本当に魔王というのは存在するのか」
僕は、ベルントの言葉に頷く。魔王は本当に存在するのか。その魔王の存在と魔核が繋がっているのか。
「魔王は過去に存在していました。そして、200年前の魔核というのが今回、出現した魔核と非常によく似た悪影響を及ぼしていると分かったからです」
ベルントは言葉を一旦止めてから、僕の反応を確認して話を続けた。
「今回出現した魔核は、30年前や50年前に現れた物と違って”男性に強い影響を与えて正気を失わせる”という特性がある事が分かっています。そして200年前の出来事にも、酷似した状況が記録されていました」
ベルントは古めかしい本を取り出してきて、僕らの目の前でとあるページを開いて見せた。本に書かれている記録が、200年前の魔王が現れた頃の記録という訳なのだろう。
「この本には、王国で起こった過去の出来事が細かく記されてあります。ここです、この箇所に次のように記録されていました」
ベルントが指差す部分。彼は、その本に書かれている文章を読み上げた。
”我々は首都を防衛する為に増えすぎたモンスターを狩猟し、魔核を処理するための軍隊を派遣した。その作戦は、派遣した軍隊がほぼ全滅という最悪の結果となった。なぜ、我が国の精鋭であったはずの軍隊が全滅したのか、その原因は彼等が仲間割れを起こしたからだと言う。正気を失い、仲間同士で互いに殺傷しあったという事態が起こったのだ。後に判明した事なのだが、彼等が正気を失った原因は魔核にあった”
「ここに書かれている通り、魔核の影響によって正気を失った人々について記されています。200年前に出現した魔核には、現在の魔核と同じ様に”正気を失わせる”というような特性があったようようです」
確かに書かれていることが事実とするならば、いま出現しているという魔核には、30年前、50年前の過去に現れた魔核とは違うような、特性を持っているという事が分かる。今回と似ている魔核が200年前にも出現していたという。
「更にこの箇所」
別のページを開いて、ベルントが文章を読む。その部分に、魔王との戦いの記録が細かく書かれていた。
「この本は、王族以外には門外不出の特別な本です。今回の件を解決するためにと、特例で持ち出し許可を頂きました」
200年前に特殊な魔核が出現して、その同時期に魔王が現れたというような記録が残っていると。
だがしかし、それだけの情報では可能性があるかも知れないという程度でしかないと僕は思う。これから魔王が現れるだろうと、と確信できる程ではないだろう。用心するに越したことはないとは思うが。
【試作】戦乙女クランの男の娘~男子禁制のクランに所属している僕は脱退したいと訴える~ キョウキョウ @kyoukyou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます