第21話 恐ろしい事実が発覚したのです

 王城での話し合い。魔核問題に対処するための助っ人として、王国から紹介された勇者と呼ばれている人物。急に彼らを派遣する言われたので、その内容を詳しく確認する為にやって来た、僕とクラリスの2人。


 部屋の中には、僕とクラリス。そして勇者側にはアランと名乗る青年と、彼の仲間であるらしい女性たち、タチアナ、コラ、メラニーという3人が居た。


 何故か彼女たちは、僕とクラリスを観察しているかのような鋭い視線を向けてきたが、どうしてなのか理由は分からない。これから、仲間として協力できるのだろうか不安だった。


 それから少し待っていると、遅れて今回の助っ人の件を提案してきた大臣が部屋にやって来た。以前、クラン会合で進行役を務めていたあの人だ。名前は確かベルントだったか。


「あー、いや、申し訳ない、遅れてしまいましたな」


 以前と同じような言葉を口にして、空気を読まず脳天気な声で自分の席に座った。まずは、今回の件について彼と話をする。


 なぜ急に、戦乙女クランに勇者という人材を派遣するという話を持ってきたのか、という事について確認する事から始めた。


「戦乙女クランは、いま魔核問題の処理に追われていますが作業は非常に順調です。時間は掛かっていますが、年内には全ての仕事が完了する予定です。率直に言って、今のところ新たに誰かの助けは必要無いのです」


 むしろ、今から助っ人だと言って作業に組み込もうと考えれば、調整する為だけに余計な手間が増えそうだった。そもそもが、魔核の影響を受ける可能性があるだろう男性のアラン。魔核のある場所には派遣できない。


 しかも、外部からやって来る男性。戦乙女は男子禁制のクランであるので、内部にも配置できないし、現場に派遣して協力し合うのは難しい。だから、王国から人材を派遣してくる必要は、無いんだと訴える。


 だが今回の勇者を派遣するという話、別に理由が有るとベルントは打ち明けた。


「実は今回の各地に魔核が出現した事件に関して、恐ろしい事実が発覚したのです」

「恐ろしい事実?」


 僕はベルントの言葉を聞いて、繰り返し同じ言葉を口にした。その発覚した事実というのが、今回の勇者という人物を急に派遣すると言い出した事と繋がるのだろうか考えてみるけれど、想像つかなかった。


 ベルントの話を真剣に聞く。


「私達も魔核の問題を解決するために、昔の記録を紐解いて原因と解決策を探ろうと動いていました。そうした所、200年程前に魔核が増加したという記録が古い書物に書かれている箇所を発見しました。そしてその記録によれば、魔核の増加は魔王が出現する前兆であったと記されていたのです」

「魔王?」


「はい。その記録によれば魔核の発生というのは、魔王がこの世界に出現したことによって引き起こされた事態だと」

「……それはつまり、近い将来に魔王が我々の目の前に出現する可能性があるということですか?」


 魔核の増加は魔王が出現するという前触れであると主張だと。確認すると、コクリと頷いて肯定するベルント。


 確か200年もの昔に魔王が居た、という話を僕は本で読んだ記憶があった。

 その当時は、魔王の大軍勢によって世界は滅びの危機が迫るほどだったそうだが、勇者によって人類は助かったと言い伝えられている。


 だがしかし、昔の出来事なので魔王が本当に存在していたのかどうか定かではないおとぎ話だった。200年も前の出来事だし、生きている人間は残っていない。


 過去にあったという話が残っているだけで、本当に魔王が存在していたという証拠となるようなものは残っていない。今ではもう、本当に魔王なんて居たのだろうか、と疑問を呈する人達も多く居る。


 だがベルントは真剣に、魔王の存在について信じているようだった。今回の勇者の助っ人も魔王対策として提案してきた、という事らしい。


 モンスターの突然変異、魔核の発生、王都の二大クラン崩壊、次は魔王の出現だ。話が、段々と大きくなっていくようだった。これ以上、面倒事が起こるとなると対処しきれそうにない。

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