第5話「着信あり」
目が覚めると、十一時半を過ぎたところだった。
たっぷりと眠り、頭はしゃっきりとしている。食器類はいつの間にかきれいに下膳されており、テーブルには冷えきったおしぼりと裏返しになった伝票だけが整然として残っていた。
眠っている間に、夢を見た。
夢には、
夢の中で、私は浅井と酒を交わしていた。
場所はどのあたりか判然としないのだが、下北沢や三軒茶屋あたりにありそうな年季の入った薄暗いバーのカウンターに、ふたり並んで腰かけていた。ほとんど
カウンター横のテレビでは
スマートフォンが振動し、画面を見ると
「はい」
出ようか無視するか迷ったものの、彼が留守電を入れ始めて数秒のところで応答した。
「あっ、もしもし。
久しぶりに耳にふれる快活な声。席を立ち、トイレの付近まで移動する。
「おぉ久しぶり。池原です」
「すいません、こんな時間にお電話して。今、少し話しても大丈夫ですか?」
「あぁ、うん。大丈夫だけど、わざわざ電話してくるってことはずいぶんと重大な話とか?」
「いやぁ、そんな重大なことではないんですが、たまにはしてみようかなと。久々に、悦弥さんとお話したかったですし!」
電話越しに、小森の邪気のない声がよく通る。
「あぁ、そう。それで、話って何かな?」
小森のことだ。なにか裏があるわけではなく、心からそう感じての行為だろう。サラリーマンと
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