第3話 例の事件

 「涼太!これからゲーセン行くんだけどお前もいこうぜ!」


 ホームルームが終わり、各々が下校支度、部活動の準備をする中、俺の隣に座って帰り支度をしている男、鳴崎音也が相変わらずのテンションの高さで声をかけてきた。音也は小学校時代からの涼太の幼馴染であり涼太の持つある秘密についても知っている数少ない友人の一人だ。


「ごめん、俺この後バイト入ってるんだ。また今度誘ってくれ。」

「そりゃ残念だなー、俺のクレーンゲームのウルテクを見せつけてやりたかったのに」

「そんなこと言って、この前なかなか景品取れなくて自棄になった挙句、金欠になって俺に金借りてただろうが」

「それは触れない約束だろ、兄弟!まぁ、今度こそ魅せるプレイするからさ暇なときは声かけてくれよ!じゃーな!」

そう言って、暑苦しく組んでいた肩を外し音也は去っていった。

「そういえば貸した金を返してもらっていないや、これだからあいつは・・・」

明日、音也にどのようにして返金を促そうかと考えながら、涼太は学園から出た後、バイト先へと向かった。


 「ん?」

バイト先へ向かう途中、行きつけの古本屋の前で涼太はある人物を見つけた。そこには、学年一の美少女である鈴城凛が居た。彼女に憧れている涼太にっとっては滅多にない会話をするチャンスであったが、涼太にはそんな悠長に考えを巡らせている程の余裕はなく彼女が置かれている状況についてひたすらに焦りを覚え、あぶら汗を掻いていた。

 「どうしよ・・・鈴城さん完全に不良に絡まれてるっ」

彼女は今、二人組の不良に絡まれていた。リーダー格であろう男は髪を金色に染め竜の刺繍の革ジャンに、耳にはド派手なピアスといったようにいかにも不良らしい身なりをしており、それに加えて高い身長などから凄まじい威圧感を放っている。その男が侍らせているであろう黒髪の女が一人、その大男にぴったりとくっ付いていた。その男の巨体に隠れて顔を見ることはできなかったが、おそらくその女も男と同じようにピアスなど、これまた不良然とした身なりをしているのだろうと思われた。二人組はじりじりと凛との距離を詰めていき、その間男は彼女から目を逸らすことはなかった。

 「はやく人を呼ばなきゃっ」

涼太は、この状況を打破しようと辺りを見まわした。しかし、凛達と涼太以外に人気はなく助けを呼ぼうにもどうにもならなかった。そこで涼太は覚悟を決め、彼女のもとへと走り出した。

 「鈴城さん!!」

 「御門君?え、ちょっとっ!!」

そこからはあまり記憶はなかった。彼女の手を握って、ただひたすらに走った。そして二人組が完全に見えなくなったところで急に握った手の感触を意識してしまい、一言別れの言葉を凛にかけて涼太は逃げるようにバイトへ向かった。



と、これまでが目の前の少女が言ったことに該当する涼太の記憶であったが、

 「思い出してみたけど、なんでそのことを君が知ってるの・・・?」

涼太は当然の疑問を彼女に投げかけた、その記憶が正しければその出来事を記憶している女性は凛か大男に付いていた不良女しかいないはずで・・・

 「ってまさか・・・君は・・・」

涼太のその言葉を聞いて少女は満足そうに、大げさに頷いて

 「そのまさかですよ先輩!!私が先輩の言うところの不良女です!!」


 

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常識的に考えて、俺に惚れるのはお前じゃないだろ・・・ 雪宮 雪 @yukimiya_setsu

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