第4話 告白

「あのな。パパ達は若い頃子供が欲しかったんだけど、なかなか授かる事が出来なかったんだ…… 」


 それから、パパとママは不妊治療をしたけど、3年続けても上手く行かなかった。


 だから2人は不妊治療を諦めて、養子を迎えようと施設へ見学に行ったんだって。


「そしたら、産まれたばかりの瞳が居たんだ。俺たちを見た途端、キラッキラに目を輝かせてさ。俺たちに小さな手を伸ばして来たんだ 」


 その日、施設の前で拾われたばかりの私には、まだ名前がなかった。


 だから“瞳”と名付けたんだって。


「その時思ったんだ。この子、俺たちの子なんだって。間違えて別な場所で生まれちゃったんだ、って」


 あたしの目から、さっきとは別な涙がこぼれた。


 今度の涙は温かい。


 胸に灯った明かりが涙を温めているんだ。


「瞳は、ちょっと迷子になってただけだよな?」


 次から次から熱い涙が溢れて、大好きなパパが見えない。


 パパの顔が見たいのに。


「ちゃんと瞳が俺たちのところに来てくれたからこそ、その後は岬と翼を授かることが出来たんだ。瞳、パパとママのところに戻って来てくれて、ありがとう 」


 私は首を左右に振った。


 一瞬でもパパの愛を疑っちゃってごめんなさい。


 22年前、離れ離れになった私たちは、出会うべくして出会ってたんだ。


 22年間、両親をほんの少しも疑う事なく今まで過ごして来た。


 私の方こそ、変わらぬ愛を注いでくれてありがとう。


「だから、瞳は血の繋がりは無いけど、本当の子供だ。今までも。これからも 」


「そうだよ。姉ちゃん、ママの歩き方とそっくりじゃん。ママの子供に間違いないよ」


 岬が当たり前の様に話した。


「だよね。私達に怒る時の口調なんかパパそっくり。ソファでうたた寝してる時の格好だって完全にパパ似だよ」


 翼なんて言いながら思い出し笑いをしている。


 岬と翼の言葉に、パパはニヤリと笑う。


 ほら、やっぱり私のパパはカッコいい。


 だって、あたしのピンチを助けてくれる。


 もう嗚咽を抑える事が出来ない。


 パパ、ママ、今まで“本当の子供じゃない”なんて、疑う余地がないくらいに愛情を注いでくれてありがとう。


 沢山伝えたい事が有るのに、嗚咽が邪魔して上手く話せない。


 私もパパとママ、岬も翼も心から愛してるよ。

 

 感謝の気持ちを伝えたい。


 だから今、あたしの方こそ、素直な気持ちで言いたいの。


「パパ。ありがとう。みんな大好きだよ」

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迷子 とまと @natutomato

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