第3話 真実

「瞳ー! ゴハンよー! 降りてらっしゃい」


 階段の下からママが呼んでる。


 リビングに行くと、岬と翼がゲームの対戦をして、キャッキャと盛り上がっている。


 そういえば、岬も翼も髪質は張りの有るストレートだ。


 私のように、癖っ毛の細い猫毛じゃない。


 血液型だってそうだ。


 パパはAB、ママはO。


 O型の私って生まれないんじゃないの?


 どうして今まで気が付かなかったんだろう。


「あ、お姉ちゃん! 岬がズルするー! なんとか言ってやってよー 」


 全く、私の気持ちも知らないで、あんた達は平和で良いわね。


「ズルじゃねーよ。翼が下手なだけだろ! 」


 私は2人を無視してダイニングに行った。


 ダイニングテーブルでは、パパが新聞を読みながらビールを飲んでいた。


 この人も私の本当のパパじゃないんだよね?


 私の席はパパの前。


 新聞越しに見つめてしまう。


 パパ、今、どんな顔してる?


 本当はいつかバレるかもって、ビクビクしているんじゃないの?


 “パパ、本当の事教えてくれる?”


 “私、本当は誰の子なの?”


 “あの書類は間違いだよって言って”


 ねえ、パパ。


 パパ。


 不意にパパが新聞を畳んで私に目を向ける。


「瞳。どうした?」


 どうしたってどうしたの?


「どうして泣いてる? 何かあったのか?」


 言われて、頬に手を当てる。


 確かに手のひらは濡れていた。


 冷たい涙が、頬を伝っていた。


「瞳? 話してごらん 」


 パパは優しい。


 だから大好き。


 あたしは自他共に認めるファザコン。


 なぜって、パパはカッコいい。


 髪は薄いし、顔はイマイチだけど。


 私がピンチの時は必ず助けてくれるもの。


 彼と喧嘩した時だって、号泣してたあたしを慰めて、謝りに行きたいっていう私の我儘を聞いてくれた。


 彼の家まで車で送ってくれて、ずっと待っててくれたっけ。


 今度のピンチは?


 今度のピンチも助けてくれる?


「今日ね。パスポートを申請する為に戸籍抄本取りに行ったの…… 」


「なんだ。その事か」


 パパはいつもの優しい顔で笑った。


 “なんだ”って?


 どういう意味?


 あたし、こんなに悩んでるのに!


「瞳は迷子になってたんだよ。なぁ、ママ」


 優しい顔を崩さずにママを呼ぶ。


 全く動揺しているように見えない。


 なに?


 あたしの方が、おかしいの?


「岬、翼も、席に着きなさい。パパから少し話がある」


 みんなダイニングテーブルに着いた。


 いつもの顔ぶれ。


 いつもの風景。


 でも、私だけ色を失った、異質な存在。


 



 

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