閉鎖都市

２４

それに何故（なぜ）か息苦しさを覚え、

僕は人形の様（よう）に硬直（こうちょく）したままの彼女を抱え、

立ち上がった。

前方からナビがストラムの下を潜（くぐ）り抜け、

此方（こちら）に駆（か）けて来る所だった。

少女もそれに気付き、

僕から離（はな）れナビを迎（むか）える。

『ナビ！』

ナビはそんな少女の胸に飛び込んだ。

少女はナビを両手でしっかり抱き止め、

安堵（あんど）の声を発（はっ）した。

『大丈夫（だいじょうぶ）だった、ナビ』

ナビは無表情（むひょうじょう）に頷（うなづ）いた。

「こちらは心配ない。

　それよりそっちは大丈夫か？」

ちらりとナビがこちらを見た気がした。

少女は顔を強張（こわば）らせぎこちなく頷（うなづ）く。

『うん』

そんなのんびりした会話に割って入った。

「それよりナビ囲（かこ）まれてる。

　 速く逃げないと 」

ナビは白々（しらじら）しく耳を上げると、

無感情に呟（つぷや）いた。

「でっプランはあるの？」

僕は一瞬口ごもり提案（ていあん）をだす。

「とりあえずは外に出て、

　パイプラインを逃げるしか

　ないんじゃないか？」

車外を見回すと、

車両の外を覆（おお）う透明（とうめい）なパイプラインの中に

ストラムの影はなかった。

「それはやめた方がいい」

ナビはあっさりとその提案（ていあん）を却下（きゃっか）した。

「パイプラインの中は、

　軟化（なんか）エアロジェルと言う、

　液体の様（よう）な特殊（とくしゅ）ガスで満（み）たされている。

　息が出来たとしても、

　すぐに酸欠（さんけつ）で窒息（ちっそく）するだろう」

ナビがそう言い終わる前にその上空には、

不気味（ぶきみ）な影が滞空（たいくう）していた。