2 PVPオンラインゲームの世界

 そう。

 俺の考えが正しければ、これは最後にプレイしていたオンラインゲームの世界のはずだ。

 【キング・オブ・デストロイヤー】、通称“KOD”。

 知る人ぞ知る、ヨーロッパ製の人気オンラインゲームだ。

 このオンラインゲームが開発されたのは、確か2007年か2008年頃。

 「北ヨーロッパ発の残虐非道なオンラインゲーム」という過激なキャッチフレーズで、サービス開始前から、世界中で大きな注目を集めていた作品である。

 その勢いは、本当に凄まじいもので、KODのサービス開始後、瞬く間に、世界各地のゲーマーたちは、これに夢中になった。

 日本でも、いわゆる「まとめサイト」が、KODの特集を組んでいた。

 その時から、俺はKODの世界観に興味を持っていた。

 俺が最初にKODをプレイしたのは、恐らく2012年頃。

 プレイ開始に伴い、大きな問題になったのが、言葉よりも“課金システム”の方だった。

 サービス開始直後のKODでは、クレジットカードやゲーム内通過を用いた課金が主流であり、それは世界共通だった。

 KOD側がプレイヤーたちに提示した月額料金は、約1500円程度。

 これは、俺の感覚では、充分に高いと思う。

 そもそも俺には、「ゲームに課金してやるか」という意地みたいなものがあった。

 ゲームとリアルの金は、分けるようにと考えていたのだ。

 しかし、新たなユーザー層獲得の一環として、KODの運営側は、後にこの課金制度を廃止した。

 つまり、KODは、基本的に無料オンラインゲームとして生まれ変わった。

 その歴史があり、“基本料金無料”という宣伝に釣られて、ようやく俺は、KODの門を叩いたという訳だ。

 実際にプレイしてみると、ゲームの中には、既に数多くのプレイヤーとギルドが存在していた。

 言語、スキル、レベル上げ、クエストなど、俺に課せられた問題は、最初から山積みだった。

 しかし、最も大きな問題は、このオンラインゲームがPVP特化型だということに他ならなかった。

 日本という、比較的珍しい国からログインしているにも関わらず、その日のうちに、見ず知らずの外人たちと殺し合いをするのだ。

 こんなハードなオンラインゲームが、今まであっただろうか。

 俺には、充分過ぎる程の刺激だった。

 明確には、PVPができるようになるためには、キャラクターのレベルを20まで上げる必要があった訳だが。

 言っておくが、このKODの人気の秘密は、圧倒的なグラフィックと世界観に加え、徹底されたPVPシステムだった。

 主にKODの世界では、プレイヤーが様々な目的を自由に設定できた。

 狩り、冒険、戦闘、ギルド、国造り。

 恋愛はできるかどうか不明。

 俺は試したことがない。

 このゲームに参加している世界中のプレイヤーたちは、高確率でPVP目的だった。

 手っ取り早い話、様々な国のプレイヤーたちは、激しい殺し合いがしたくて、KODにログインしていた。

 そういう殺伐とした世界だから、俺も覚悟を決める必要があった。

 できるなら、このゲームで天下を取るくらいの勢いで、プレイに挑んだ訳だ。

 しかし、結果はどうだ?

 考えるだけでも、頭が痛くなってくる。

 第一に、このPVPオンラインゲーム、難し過ぎる。

 日本のオンラインゲームで楽しんでいた頃が懐かしかった。

 そして、敵が強い。

 強過ぎるのだ。

 俺は、どうしても“1vs1”では、勝てなかった。

 つまり、そういう世界で生きろという話だろ?

 まさに「詰んだ」というやつだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

PVPゲームの外国人ハッカーが強すぎて詰んだ件 村田ミチヨシ @muratamitiyoshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ