ある少女の見る夢

雨世界

1 ……毎日を、きちんと生きる。

 ある少女の見る夢


 ……毎日を、きちんと生きる。


「人ってさ、死んでしまったらどうなると思う?」

 少女は少年に質問する。視線は星を見続けている。

「急にどうしたの?」

 少年が少女に言う。

「だって、知りたいじゃん、どうなるのかさ」

「きっと、どうにもならないよ。死んだら終わり。たぶん、人は何処にも行かないよ」

 少年が答える。少年も星を見続けている。

「それは違うと思うよ」少女が言う。

「違うって、なにが?」

「どこにも行かないってところ」

「じゃあ、君は人が死んだらどこに行くと思っているの?」

 少年の質問に少女は笑顔で答える。

「今見ているところ。『人はね、死んでしまったら星になるんだよ』」

 少年は少女の顔に視線を移す。なんだかとてもあきれたような顔をしている。

 ようやく私の顔を見た。最初からそうしていればいいのに。

 あなたは星を見てないでしょ? あなたはいつだってどこか遠いところを見ている。ここではない場所。どこか遠くに行きたいんだよね、あなたは。

 でもだめだよ。そんなの許さない。あなたは私のそばにいるの。

 私とあなたはずっと一緒に暮らすんだよ。

 だって、私たちは家族なんだから。

 離ればなれになることなんて絶対にないんだからね。

 そう心の中でつぶやくと、少女は少年の美しい黒色の瞳を見つめ返した。そしてそれから、もう一度、夜空に輝く満天の星空を見て、にっこりと笑った。


 星空を背景に、あなたの顔が私の瞳の中に映り込む。

 私はなんだか、星に手が届いたような気がした。

 気がしただけで、十分だった。


 そこで少女の夢は終わった。

 朝目が覚めると、やっぱり、少女は泣いていた。

 見ていた夢は、消えてしまった。


 ある少女の見る夢 終わり

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