4章 ヴァイニンガーと闘争領域の拡大

ミソジニー

 先日、私が友人と会話していた時、昔の少女まんがブームの中には女性の女性嫌悪があり、それにより男の子同士の同性愛的なものが流行ったと教えて貰った。そういえば、栗本薫が美少年学入門の中で、萩尾望都はトーマの心臓を男ヴァージョンと女ヴァージョンの二つを検討していたが、女ヴァージョンは何だか生々しかったので男ヴァージョンを採用したと書いていた。この事は検討する価値がある。


 女性についてよく理解する為には、一山いくらのフェミニズム文献を読むよりも、女性差別的――ミソジニストの書いたものを読むことで見えてくる氷山があるものだ。女は男の症候である。永遠の青年、ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンとを比較してみよう。70を超えるお爺ちゃんだというのに、全く大人気のないトランプと――一見よく出来たリベラル女性の、だが確実に問題を抱えたクリントン。今や我儘気ままで成熟しない悪戯小僧と、それを叱るしっかりとした―症候である女性教師というイメージは普遍的である。つまり何が言いたいか、家父長制的制度社会が女性を形作り――それが意識されなくなった今、逆説的に意識されないままに行っている女性の身振りが男性性を形作っているとしたら……?


 この章では、女性差別、女性蔑視の観点から、逆説的に百合を見ていく。そこで登場して貰うのは、女性蔑視的だとも評されるミシェル・ウェルベックの処女小説『闘争領域の拡大』と、ヒトラーが評価したと言われている唯一のユダヤ人、筋金入りのミソジニスト、オットー・ヴァイニンガーだ。彼は女性について誰よりも理解していたが為にミソジニーに走らねばならず、24歳の若さで自殺しなければならなかった。ここではスラヴォイ・ジジェク『快楽の転移』の6章をブリコラージュしながら、ヴァイニンガーの反フェミニスト的性格からヘーゲル哲学における「世界の夜」、女性について論じる。

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