女性性=身体性

 身体とは、もっとも身近な「自然」であると同時に、ヘアーカットから臓器移植に至るまで見れば明らかなように、最も身近な「人工物」である。このアンビバレンスをどのように理解すればよいか。精神分析的な意味で、「身体を持っている」と言い得るのは、この世界では女性だけである。これは、女性が男性に比べてはるかに、自らの身体性に敏感である、という意味でもある。摂食障害がほとんど女性特有の疾患であるのも、こうした女性特有の身体意識と関係がある。女性は独特の身体感覚を共有することで、互いに共感したり同一化したりすることが可能である。こういった共感は男性同士ではなかなか成立し辛い。繰り返すが、女性は自分が女性の身体をもっていることだけを理由として連帯することが出来る。当然ながら、母娘関係においてもこれが適用されてしまうことにより悲劇が生まれてしまうが……(精神分析家の露悪的な癖に従ってあえて言うなら、母娘間の愛憎渦巻くプラトニックな近親相姦!)今回は割愛することにしよう。


 自然なままの身体を愛する享楽、身体をいじくりまわし人工物にしてしまうことの享楽。これはイデオロギーと人間の付き合い方そのものではないだろうか?支配的イデオロギーに問いかけられた人間は、警官に「おい!そこのお前!」と問いかけられた時のように、応答せざるを得ない……。振り向いた瞬間に象徴的なアイデンティティが与えられ、どのように振る舞おうとちぐはぐではみ出た人工装着物として永遠に目立つ。主体は象徴的仮面、あるいは称号と同一化できない――ゆえにヒステリーが発生する。


この過剰なまでの身体性をよりはっきりとしたレベルで表現する為には、男と男、男と女ではなく――女と女である必要があるわけだ。

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