ヒステリー者と精神分析
『やがて君になる』のヒロインである七海燈子は、典型的なヒステリー患者である。文武両道の才女であるが、七年前に死別した当時の生徒会長だった姉と比較され、そうして亡くなった姉の代わりをしようと懸命に励む愚かな少女でもある。ヒステリー患者の問い――「私は女か、それとも男なのか?」分かりやすく言い換えれば、私は象徴的な父に対して、どのようなものであるのかが解らない……。この分裂の為に、燈子は誰のことも好きにならない=<宣告的次元>を持たない、言わば心地よい虚無にクッションの綴じ目を縫い付けてくれる侑に惹かれるのである。ゆえに、侑が燈子を好きになれば、この心地よさが損なわれてしまう……。
私はあなたが好きでキスをするけど、あなたは私の事を好きにならないでという支離滅裂な燈子の言動は、このヒステリーが原因である。そんな中、侑は燈子に変わって欲しいと願う……。言わばこれは、精神病患者と治療者の関係である。精神分析を実践することにより、関係性をうつろわせていく。そんな形の百合を描くとは、なんてこった!私がもっと先に百合について深く考えていれば、この形に辿り着いたのに!仲谷鳰め、こんな奴は、こんな天才は、とっととくたばっちまえばよかったのだ!
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