きたないはかわいい かわいいはきたない
つい最近百合姫で連載を開始した『きたない君がいちばんかわいい』は、対象aの機能をこれでもかと表現した、これからの展開が待ち遠しい作品である。第一話のストーリーはシンプルだ。愛吏はひなの為にお弁当を朝早く起きて作り――お陰でひなは昼休み、2つお弁当を食べることになる。放課後、誰もいない科学実験室で愛吏はひなの、まだ食事を消化しきっていないお腹を抑え、喉に指を入れる。そうして、嘔吐させる。
ひなの綺麗な身体から、こんなに汚いものだすんだ、わたしのためならなんでもしてくれるんだ――そう感激する愛吏はひなを抱擁し、享楽する。もっと苦しんでほしいなぁと歪んだ欲望を増幅させながら。
もっとも根本的なレヴェルで、他者に含まれる耐え難い余剰快楽、aに一撃を加えようとする努力によって、感情はその対象の「現実の特性」には限定されず、その本当の核、対象a、「対象の中にそれ自身以上に」あるものを標的とするものである以上、感情の対象は、厳密な意味で、破壊できない。現実の中にある対象を破壊すればするほど、その思考の核が我々の前にますます強力に立ち上がってくるのである。
ひなが吐瀉物に塗れ、きたなくなればきたなくなるほど――例えばユダヤ人が無残に殺されれば殺されるほど、生き残っているユダヤ人によってもたらされる恐怖の大きさが増すように、かつてのボスニアにおけるムスリムについても、彼らが殺され飢えに苦しめばそれだけ、セルヴィア人の目には、「イスラム原理主義」の危険がますます強力になるように、「きたなくなればきたなく」なるほど「かわいく」なるのだ。
犠牲となっている彼女を苦しめ(嘔吐させる)愛する(お弁当を作り抱擁する)能力――は、彼女が「自分の幻想の虜(ラカンがサドについて言ったこと)」になったという事実を証明する。この一撃は、耐え難い余剰快楽をねらったものだ。
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