最強は混沌と接す⑤
スッキリとした気持ちで会議室へ戻ってみれば、問題児三人とアース主従が何やら言い合いをしていた。ひとまず雪継と千桜に任せることにして壁際の席に着くと、酷く疲れた顔をした先生と白が座った。
声を出さないようにして五人の話し合いの様子を伺っていると、どうにも会話が成立しているようでいない事がわかる。
雪継が言葉を変えながら出来うる限りでいいから皆と歩調を合わせるように行動して欲しいと言えば、xxみうたんxxという回復職もどきが「何がダメなのぉ? みうたん、一生懸命やってるもん」と反省する素振りなく甘えた声で言い返している。他の二人――響カスミとナノ――に至っては、話を聞く気がないようで髪を弄ったり、爪にマニキュアを塗ったりしている。
マスターと副マスが揃ってるのにこの態度か。庇う意味あるの?
はぁ、と雪継から物凄い大きなため息が吐き出される。
「このままだとせっかく加入してくれたのに君たちを血盟から脱退せざるを得ない。じゃなきゃ、アースも同盟から追放される。それぐらい君たちの行動が、同盟内で問題になっているってことだよ」
「えぇ~! みうたん一生懸命やってるのにぃ~、ひどいぃ……」
「どうして同盟が、血盟のことに口をだしてくるんですか? わたくしたちが、何したって言ってきてるんです?」
「えー、人数必要だから参加してあげてたのにひどくな~い?」
一生懸命やってたら何やっても許されると思ってる思考が、ヤバイ。
言い方も間延びしまくりだし、聞いてるだけで会話がうざい。あぁ、今すぐころs……だめだめ! この
注意するとしても、何故悪いのかを理解するまでに時間がかかる上、同性だという理由だけで私が悪者にされてしまう可能性が高い。
これと話すとか無理じゃない? もう、諦めてサクッとBANで……。あー、雪継の視線がうざい。私に助けを求めるな!
てか、ずっと会話が平行線のままだし、一生懸命やってるを連呼するだけなんだから、スパッと自主脱退させてしまおう。こんな奴ら要らないわ。
「だからさ、悪い悪くないじゃなくて――」
腹が決まったので傍観を止めて、話し合いに加わるべく立ち上がった。
私と一緒に先生と白も立ち上がる。
と、その時だった。
なんと、あの事なかれ主義全開の最弱盟主雪継が!!
「もう何度も言ったけど、同盟から君たちに問題行動が多すぎるって言われてる。このまま話を聞かない反省しない様なら、せっかく楽しんでる他のメンバーたちのためにアースから追放するしかなくなる。だからさ、しっかり聞いて欲しい」
あのヘタレな雪継が、ちゃんと盟主してるじゃん! 偉い。
心の中で拍手を送り、加勢すべく私も話に加わる。
「同盟主として、あなたたちが何を言おうと同盟に所属し利益を得ている以上、同盟が決定したことをただの同盟所属血盟員の言葉だけで覆すことはできない。もし、申し立て……」
息継ぎのタイミングで先生から、肩をトントン叩かれた。
そして、首を横に振られる。
意味がわからずコテッと首を傾げれば、先生が見えない位置で彼女たちの方を指さした。
ああ、理解は出来てないと。で、いきなり話に加わって来て、何様? とか思ってらっしゃると。一応、同盟主って名乗ったよ? 同性だからって、睨みつけられる謂われなんてないし、遠目に見るだけで話したことなかったはず。 君たちが、注意されたことを守ってさえくれれば、私が出張ることも無かったんだゾ。
マジカーと頭を抱えたくなるのを堪えて、これまで対応していた先生たちの方を見れば、二人揃って無駄だと言わんばかりのジェスチャーが帰って来た。
これまでも、ずっとこんな感じだったのね。そりゃ、いくら先生と白でもお手上げになるはずだわ。
本当にこんな状態で、よくメンバー同士が揉めなかったなー。他のメンバーが我慢強いか、スルースキルが高くないとできない芸当だよ。
アースのメンバーに対して感心しながら、意識を睨んでくる三人に向ける。
わざとらしく、大きなため息を吐き出す。そして――
「貴方たちに何言っても無駄って分かった。さっさと脱退してくれないかな?」
遠回しに言っても意味が無いことから、分かりやすい言葉ではっきり、くっきり言ってみた。
すると、三人が三人とも悲劇のヒロインかってぐらいに、声を大きくして言い募ってくる。
「え~、超怖いんですけどー! 白様ー、助けてー!」
「ひどいですぅ! ますたぁが言うからぁ、協力してあげてたのにぃ、脱退しろなんて命令しないでよぅ! 新人の癖にぃ!」
「大体、あんた誰で何様なんですか? 大二郎先生さん、ご存じですか?」
おふっ、色々ツッコミどころが満載過ぎて、どこから手を付けたらいいのかな? やっぱり同性だと攻撃対象なのね。だから、恋愛脳プレイヤーは嫌いなんだ!!
まるで苛めにでもあいました! と、言わんばかりの潤んだ瞳を男性陣へ向けるお馬鹿さんたち。
それに呆れながら白へ「助けてって言われてるよ?」とジト目を向け。雪継と千桜へは「新人って誰の事よ? 説明不足じゃない?」と怒りを込めておく。先生に関しては問われただけなので、何もしないでおいた。
「彼女はren。新人じゃなくて、BFの盟主にして同盟主だよ」
「雪継の紹介に付け加えるなら、装備は今違うけど鯖で一番強くて有名なプレイヤーってことか?」
「それと、気に入らなきゃ容赦なく身内でもPKするわいね」
「renにゲーム内で喧嘩売ったら、所属する血盟ごとPKされる覚悟がいる。一度殺したら終わりなんて生易しいものじゃないから、君たち気を付けないとアースごと殺られるよ?」
「てことで、さっさとアースから出ていって? 抜けないならBANする。以上、話し合い終わり」
これ以上、時間を無駄にしたくなかった私は、そのまま終了させるべく告げた。
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更新が遅くなり、すみません。
いつも、ありがとうございます!!
世界最強はニヒルに笑う。~うちのマスター、ヤバ過ぎます~(改稿中) ao @yuupakku11511
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