最強は混沌と接す④
時間を持て余した私は、あの見事なピンクピンクしい部屋の内装を丸ごと入れ替えることにした。
せっかく用意してくれたメンバーには申し訳ないとは思う。が、目が痛くなるようなピンクの部屋で寝起きるのは、ぶちゃけ拷問でしかないから諦めて欲しい。
「ren、これこっちでいいの?」
「血盟倉庫行きで」
「ぬいぐるみはどうするわいね?」
「いらな――」
「むー姫のために一個、二個は残してやって?」
部屋の内装をいじり出してから、ずっとこのやり取りが続いている。
雪継と千桜からすれば可愛いメンバーが整えてくれた部屋だから、少しだけでも残してやりたいとのだろう。
でもね、私としては落ち着ける部屋にしたい。
というか、女の子らしい部屋でさえなければ、なんでもいいレベルだったりする。
ピンクと白の花模様のカーペットとか薄桃の兎ぬいぐるみやテディーベア、犬、猫、あと以前アニメになったキャラクターが可愛らしい服着てたりとか、どこのお嬢様の部屋のカーテンだよって言ったくなるやつとか、ひらひらした天蓋ベットとか……。
どこから集めてきたの? と、一度聞いてみたい。宮ネェなら喜ぶ……か? まー、とにかく! 必要ないインテリア雑貨は全て排除だ。
「……はぁ。本気で嫌だけど、ぬいぐるみだけは、一個残す。他は全部、血盟倉庫に入れて! 私は必要ないけど、雪継たちが使えるでしょう?」
このまま二人の部屋をピンクにしたらいいよ? と、いう意味合いを込めて、にやっと口角を上げた。正しく意味を理解したらしい二人の表情が引き攣る。その様子に私は内心ほくそ笑んだ。
そんな感じでチクチクと二人の罪悪感を刺しつつ、作業に没頭して二時間ようやくまともな部屋になった。
落ち着いたモスグリーンの壁紙は、等間隔に白に金の縁取りの双葉柄をした模様が入っているものを選んでみた。
床は、明るめのフローリングにして、家具類は全てこげ茶でアンティーク感ある猫足。
カーテンは、ハイライトグリーン。
そんな落ち着いた室内で唯一異彩を放つのは、棚にあるピンクゴールドのドレスを着たピンクのくまのぬいぐるみだ。
やっぱりあのくま選んだのミスったかな? いやいや、他の物よりかなりマシな部類だったし……。
究極の選択を迫られた気分で、部屋を見回していると血盟ハントから戻った先生と白が顔を出した。
「お、まともになったな!」
「いい、んー、じゃね?」
もっさりした眉毛と髭で見えないが溌溂とした笑顔を浮かべた先生が、中に入って来ると様変わりした部屋を見回して褒めてくれる。対して白は、ただ一点を見つめたまま頬をヒクヒクさせて戸惑った様子で声を出した。
それって、今までの部屋がまともじゃなかった&ファンシーなぬいぐるみに釘付けです! って言ってるよね? 私に似合わないって分かってて君たちも止めなかったってことよね!!
にっこりと笑顔を浮かべて、二人の背後に立つと肩を優しく叩いた。
ゆっくりと振り返った先生と白が、後退ろうとするのを両手の指に力を込めて留める。
「ねぇ、先生、白。先に見てたんだよね? どうして、止めなかったのかな? もしかして、私がどう反応するのか楽しんでたりしたのかなぁ?」
ゆっくりとした口調と穏やかな声で問いかけてみる。
「い、イヤ、ソノ、べ、ベツニオモシロソウダナ、ナンテオモッテナイデス」
いつもはハキハキしゃべるはずの白が、明らかな片言で否定した。それをいつも冷静なはずの先生が、振り子人形になりながら肯定している。
はい、ダウト。メンバーに嘘つくメンバーは、制裁あるのみ!
「そっか。なら、新しいイリュージョン試したいし、ちょっと近くの狩場に付き合って?」
「なんで狩場だよ!」
「嘘つきにお仕置きは、昔からの決まり!」
前血盟だった殲滅の破壊者の頃に考えた血盟規約のひとつが ”メンバーに嘘を吐かない事。ただし、仲間内の軽い冗談程度の嘘だった場合は除く。” だったりする。破った場合は、嘘を吐かれたメンバーが望んだお仕置きをすることが許されている。
この規約は、現在の血盟でも適応されており、嘘を吐かれた私は腹いせに二人を殺す権利があると言う訳だ。
規約を作った理由は――
一、同じ血盟に所属するメンバー同士の繋がりを強くすること。
二、メンバーが嘘を吐いたことで、PKに正当性がなくなるのも避けたかった。
三、私自身メンバーを仲間だと思ってることから、相手に嘘を吐かれること嫌だった。
――以上。
「「アァ……」」
がっくりと先生と白が、膝と掌を床につき項垂れた。
「うわぁ、そういやあったなぁ。そんな血盟規約……」
「あぁ、思い出したわいね。あれで何度経験値失ったか分からないわいね……」
「主に博士とキヨシのせいで、俺も何回もやられたわぁ」
「雪も?」
「千桜も?」
当時の事を思い出したらしい雪継と先王が、うる段瞳で抱き合っている。
それを他人事のように眺め、先生と白の首根っこを掴んだ私は近くの狩場へ向かうべく部屋を出た――。
――おまけ――
現在お仕置きの最中だ。と言っても、イリュージョンで殺した後日だが。
嘘を吐いた先生と白以外のメンバーが爆笑しながら、
黒:「ぷっ、これやべぇなぁwwww」
源次:「ぶはははは、白の顔がヤバすぎて笑いが止まんねー」
さゆたん:「試される腹筋でしゅww」
宮ネェ:「先生の場合、顔がほとんど見えないからお仕置きにはならなそうね~」
ミツルギ:「規約怖いっす……」
大和:「うん。確かに先生はお仕置きになってないね~」
キヨシ:「ヒッヒフ~。耐えろ俺~! これ以上酸欠になると強制終了されるから、白のSS見るのはダメだぁ~。ぶはっ」
宗之助:「イケメンの惨状でござるなw」
ゼン:「死に顔って、こんな風になるんですね」
ティタ:「ついに先生まで餌食になったんだねwww」
チカ:「俺もオプション購入で、髭つけとこうかなー」
ヒガキ:「規約だけは守ります!」
風牙:「笑わずにはいられないってかwww」
村雨:「ブフッ」
博士:「死に顔コレクター? コレクション? 掲示板に、晒すのである!」
鉄男:「何その面白そうな掲示板。俺知らねーんだけど!?」
白:「ギャァァァァ!!」
先生:「も、もう許してくれぇぇぇ!」
どれも私の最高傑作だと言える。
臨場感あふれる死に顔をとる為だけに、イリュージョンを発動した瞬間二人の姿を連写しまくった。おかげで、とても素敵な表情をしている。
因みに、ドワーフ爺である先生は顔全体を眉毛と髭が覆っているため、何枚か撮影したのち邪魔だと気づいたので初級の風魔法を死に顔に叩きつけて撮影しておいた。
ren:「博士、掲示板の正式名称plz」
先生&白:「頼むから、死に顔晒すのだけは止めてくれぇぇぇぇ!!」
その日、こっそりと私外の全員が規約を確認し直したらしい――。
=====================================
お待たせしました。更新が遅くなりすみません(;´・ω・)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます