誰もがスルーする信号で、自分だけが律儀にそれを待っている。殆どの皆様、特にカクヨムにいらっしゃる良識ある皆様にとっては、良くある日常の光景かと思います。しかし、そんな日常の一場面を、この小説は純文学として見事に昇華させております。詳しい事はネタバレになるので書きませんが、細かな情景描写が特に素晴らしく、前半は心情メイン、後半にかけてどんどん詩的に変わっていくところが、自然な流れで表現されております。着眼点もさる事ながら、これをこの分量の小説で描き切る構成力が素晴らしいと思いました。
わたくしこのお話とっても好きです。個人的意見を申しても良いのでしたら、こんなハッピーエンド、現実にあったらなあ、でもきっとわたくしはロマンチックすぎて逃げてしまいそう。シャイなのです。
雨音は傘に濡れた時が最高潮、という表現が感性を刺激して何度も読みました。傘に入る事で世界が変わるその表現がこの小説の力。あなたも雨の日が待ち遠しくなるはず。是非読んでみてください。