君とキミ

藍子

第1話 君は

君からはいつもいい香りがしてた。

「何の香り?」って聞くと

「これ?キンモクセイだよ。いい香りでしょ?」

そう言いながら細くて白い手首を僕の鼻に近づけた。

「キンモクセイって花だっけ」

「そうだよ。秋に咲く花でね、オレンジ色で小さくてとってもかわいいの」

「へー」

花に興味のない僕はテキトーに返事をする。

「キンモクセイ花言葉知ってる?」

首を横に振る。

「初恋」

真剣な表情に少しどきっとする。

「初恋ってつまり…」

僕がドギマギしているとちょっと顔を赤らめていたずらに微笑んだ。

そんな君の顔を今でも忘れない。



君はよく泣いていた気がする。

「え、もう泣いてるの?」

「だってソフィーが…」

僕が一人暮らしをしているアパートで一緒に犬が主人公の映画を観ていた時のこと、開始わずか10分で泣き出した。

泣くようなシーンがあったか少し巻き戻してみる。

「ここ?」

君はティッシュで涙をふきながらうなずく。

問題のシーンというのが、主人公の犬であるソフィーが飼い主とはぐれて悲しそうな表情をしている場面。

そこまで泣くような場面ではないぞ。

「うううう」

泣きながら僕に抱きついてくる。

愛おしさがこみ上げてくる。

僕も抱きしめて頬に軽くキスをした。

「そんなとこも可愛いね」

そういうと君は涙をためた目で微笑んだ。

「ありがとう」

そんな君の顔を今でも忘れない。



君は花が好きだった。

「花が好きだから高校のときは華道部だったの」

そう言ってよく部活の時に生けた花を見せてくれたっけ。

僕には華道についてよくわからなかったけど、君がニコニコ嬉しそうに話してくれるからそれが嬉しかった。

「やっぱりお花またしようかなぁ」

大学生になっても華道欲(?)は尽きることなく、大学生になって半年くらいで教室へ通い出した。

「お花たのしい?」ってきくと

「うん!昨日はこんな花生けたんだよ」ってたくさん写真を見せてくれた。

そんな君の顔を今でも忘れない。














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君とキミ 藍子 @tanami_1783

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