memory:130 地獄の門、咆哮す
魔神帝との謁見から、誘導航行で影の惑星へと向かう
「魔王 アバドンよ!
『シスイ……魔王 ベレト。オボエテイル。スデニルシファーカッカカラノ承認ハ、エテイル。ダガ、イソガレヨ。スデニカレハ、ベルゼヴュードノマドウガイカクニ――』
討伐陣営地球勢が絶句するのを尻目に、
だが各勢力モニターへ映し出される姿は、低次元の霊的肉体を持たぬ魔の霊体が
その
門番の本体でもあるリング状の地獄門が、惑星地表から放たれた幾重の線条に貫かれた。
それは魔の頂きも想定していた事態。だがしかし、早すぎとも取れる急転直下が討伐陣営へ、緊急的な状況を叩き付けて来たのだ。
「当主
言うが早いか、状況を察する
「くっ……ギリギリ間に合ったとは言い難い状況か! ストラズィール各機はアバドンより距離を取れ! 恐らくこれは、魔王ヴェルゼビュード復活の兆候……総員覚悟を以って当たるんだ!
「はい、シャルーアは後方へ下がります!
「了解であります! マシン・フェアリー、Ⅰ号からⅤ号を緊急パージ! 各機は宇宙航行補助スラスターをフェアリーへ換装、急ぐであります!」
次いで
そこより地球から訪れた志士達は目の当たりにする事となる。遥か数十億年前の時代に大宇宙を揺るがせた、光と魔の戦いが如何に恐るべき規模であったかを。そこに人類など入り込む余地などなく、文字通りの宇宙存亡にすら関わっていた紛う事なき現実を。
一つ一つがいと小さき人類では、魂を感じる間もなく滅して然るべき大戦の一端を――
「では各ストラズィール機へ! これより魔導外殻ベルゼヴュードを相手取り……っ!!? な、ん……っああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーっっっ!!?」
皮肉にも、宇宙と重なる能力を得た覚醒の当主はその最初の餌食となり、相次いで子供達もその深淵の絶望へと飲み込まれていた。
一方……訪れる絶望は、蒼き地球を託された機関員へも牙を剥き始めていた。
†††
母なる星を取り巻く結界の合間をすり抜け、大宇宙から降り注ぐ異形の軍勢は強力な個体が存在しない雑兵ばかり。だがしかし、その圧倒的な物量が目指すのは
それを食い破らぬ限り、すでに未来も希望も失われつつある蒼き大地の魂を食らう事も叶わないと。
「ヤクサイカヅチ隊、防衛網を下げて! これ以上散開しては奴らの思うツボです!
「ええ、了解よ!フリゲート各艦、発射管開け! 対魔弾頭をありったけくれてやりなさい!」
『イエス、アイマム! 全対魔弾頭、撃ちーかた始め!!』
襲い来る雑兵の群れを前に、施設司令室へ陣取る二人の指揮官が猛る号令を放つ。
「こいつら、数が多すぎる! ブラボーリーダー……このままでは……う、うわああぁっっ――」
『安心せいや、飛行機乗り! ワシらのヤクサイカヅチの攻撃に合わせぃ!』
『F35Bがいかに優れているとはいえ、相手は未知の異形。こちらとの連携をお薦めする。』
「……た、助かる! 各機はアメノハバキリ機動兵装との共闘を以って、湧き出る雑兵の掃討に当たれ!」
だからこそ対魔討滅の雄との共同戦線であると、勇気と闘志を翼に乗せていた。
対魔機が編隊を組み、それらが一撃離脱で手傷を追わせた個体へ烈火の如く突撃する、守護宗家が誇る次世代国家守護の剣。この戦い以降、
そんな未来を見据えた連携であったが、流石に相手の物量に苦戦は必至な戦況へと
「守り
『じゃかぁしい、分かっちょるわ!
「……難しい注文ですが、善処しましょう!
『この乱戦……くっ、このっ!? この乱戦でなかなか無理な指示ですよ、
『だがやらねば、このトリフネが墜とされる! それだけはなんとしても避けねば!
『ああもう、了解です兄様!』
徐々に後退を余儀なくされる防衛線が、
故にその、拠点防壁性能上の弱点を補う形の、各種防衛兵装であるのだ。
その防壁出力も、度重なる異形の攻撃で著しい能力低下が発生。
それでも――
劣勢は劣勢のまま、それが悪化する戦況で機関員皆へ披露が蓄積して行く。いかな雑兵と言えど、無限に湧き出る対象に対する人の力は有限である。ほどなく、その有限である絶対ラインが顕となり始めたのだ。
『……っ!? アルファ3、翼をやられた! ベイルアウトする!』
『だめだ、こちらも機体が持たない! ちくしょうめぇ!』
「おいおどれら、ベイルアウトしたら異形のど真ん中やけぇ気ぃつけや! 護衛艦、ワシが援護してやるけぇそいつらを拾え!」
『お手数をおかけします、
「気にすんな、自衛官の嬢ちゃん! こんな窮地やからてぇ義理人情を忘れたら、初めての弟子に笑われるけぇのぅ!」
一人、また一人と戦場から脱落する守護の志士達。それをあざ笑う様に異形の襲来は激しさを増し、いつしか暗雲と見紛う異形の大群が太平洋上空を蹂躙していた。
「まるで地獄、ですね……この光景!」
「ですが私達が倒れる訳には行きません! ニュクスで今も戦う子供達の、帰るべき場所を守るために!」
二つの地点を跨いだ、人類存亡を懸けた壮絶なる死闘。そして――
舞台は再び、
霊機新誕ストラズィール 鋼鉄の羽蛍 @3869927
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