memory:129 芽生える光と闇の絆
その顔合わせは、人類史上あり得ない光景だった。相手は神格存在ともされる高きに在る者。けど、思えばオレ自身があの地球の観測者であるアリスと会合した時に、この邂逅は命運付けられていたのかも知れない。
「えっと……すんげぇ魔王さんが、マジ眩しすぎてぶるってしまいそう。わた、わた……私、は、かりかり……
「ナルナル……(汗)。
「んじゃ俺か。俺は
『うむ、音鳴に沙織……そして奨炎だな。そちらは?』
「僕は
「お前まで卑屈かよ。あー、俺は
「もう、おにーちゃん! ゆーちゃんにも自己紹介させて! ルシファーさん、ゆーちゃん……じゃなかった。私は
「ここ、アタシも自己紹介する流れでやがりますか? まあいいでやがります……ウルスラ・
「ウルスラ、流石にもっと言葉を選ぶであります。自分は
『ふふ……なかなかよい面構えだな、闘真に大輝にゆーちゃん。ウルスラに姫乃……なるほど、これだけの希望満ちる光の子らであれば、
すぐにでも
これより想像を絶する戦い待つ地獄の門を開け放ち、光の勢力であるオレ達の進軍を後押しするために。
「貴君らの御名は、しかとこの魔神帝 ルシファーが聞き届けた。聞け!我がセフィロトに住まうすべての同胞達! たった今より、この光の希望満ちた志士達があのニュクスへと降り立つ! だが何人たりとも、その道を阻む事は許さぬ!」
「彼らはじき、魔導外郭を纏いてこの次元へと顕現する、負の深淵で抗う我が弟との決戦に挑むのだ! 彼らを邪魔立てするは即ち、このルシファーへ刃を向けるに等しいと心得よっ!!」
放つ宣言はオレ達ではない、セフィロトと言う魔の物が住まう魔界全土へと向けられていた。同時にそれを耳にしたあらゆる界層と呼べる世界の、
そもそも閣下のお言葉は、仮にも闇に生を受けた魔の安寧の世界へ、光の異分子を受け入れる様なもの。故に彼による宣言なく迂闊に魔の大地へ足を踏み入れれば、それこそ敵対すべきではない高貴なる魔族達との望まぬ争いが巻き起こってしまう。同時にそれは、魔王ベルゼヴュードによる深淵の浸蝕放置を意味し――
オレ達が守るべき世界の終焉を意味していた。
『……アバドンは我が言葉を聞き入れ、すぐにでも
その助力
やがてその下方……未だ輪郭すら判然としない主惑星までの道が、淡き光源で示されて行く中で。
†††
現れたのは、光学的に隠匿されていた、バラの茎に当たる
『ここより下界は、魔の存在すらおいそれと立ち入れぬ地獄じゃ。そこへ向かう前に、一旦ドレシュナイダー艦内へ集合するのをお勧めするぞ。』
「了解した、
「艦内へ移り次第、作戦最終となるミーティングを兼ねた腹ごしらえをすませておこう。腹を満たすのも大事な作戦の一つだからね。」
機体群を自立航行に任せた
そこには、最終決戦直前に空腹と体調を調整するための、料理ご意見番特性軽食が準備されていた。
「こんな感じでいいか……。君らの食事を準備させてもらった。このいんすたんとすーぷとやらは、こちらのけとるとやらから湯を注げばいいんだね?」
「うおっ……ロズが準備してたのか、これ。なんつーか……意外に魔族も、生きるのに生活力とか関係すんのかね。」
「バカにしているのか? だが、君達の持つ生命維持の手段とは、もしかすれば
「じゃあロズ君、この戦いが終わったらそのお話しましょ? ゆーちゃんもそれ聞きたい。」
「なっ……ロ、ロロロ、ロズと話をしてくれるのかい!? いや、すまない……全く――
そしてなんと、その準備を買って出たのは
「……はぁ。初の無重力移動でしんどかった所ですが、
「マジそれな。ロズ……俺達の世界では、信頼できる家族による持て成しは、料理へさらなる旨味を追加する隠し味。覚えておいて損はないぜ? まあそれを、まともな家族に恵まれてなかった人間が言うのもアレだけどな。」
「それには同意。けどきっと生きて帰れば、
「浮かれるなよ、光の同胞ら。まあ……なんだ。シザもそんな空気は悪くないと最近では……な、なんだ!?」
料理長殿より、魔族に合わせた試験的な料理もぜひ食してほしいとの声を受けていた
「シザ……食べる前には頂きます……だ。」
「わ……分かっている!い、頂きます! これでいいんだな!!」
僅かな時間の最中、光と魔の希望達が響かせる笑い声が暖かく一室を包む。まるで最初から、共に同じ世界で暮らしていたかの雰囲気を醸し出しながら。
「こう端から見てると、全然魔族も他人の感じがしないでやがります。」
「そうでありますな。自分も、彼らと共にあるならばこの戦い……勝って帰れる気がするであります。」
「気がする、じゃねぇでやがります。必ず勝って帰る、でやがりますよ。アタシらには、帰りを待ってる人達がいるでやがりますから。」
「……でありますね。訂正するであります。自分達は勝って、地球へ帰還するであります。」
無重力下から重力下へと、
光と魔の交流を、首肯の中確認し合う
今さまに、
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