第2話 いきなり思い出すよ

2話の前に 作者コメント

1話でレオがソフィアの体に入ったらソフィアちゃんが色々ひどい目にあったでしょうね笑

伏線張るのが好きなんですが、綺麗に回収できるかは至難の技ですよね。ちょこちょこ貼って大きいの回収!ってのがやっぱ醍醐味な気がする。それができるとはいってない。

では続きをどうぞ〜


無事に奥義取得が終わり帰りのHRも終わった。だがいきなり死の宣告を受けた僕は内心穏やかではなかった。やはり僕は1回死んだのかもしれないな。僕の考察としてはこうだ。レオは神に会って、もう1度生をもらったと言っていた。だがそれにもかかわらず僕の方に体の主導権が渡ってしまった。こう考えると神は一人ではないのかもしれない。レオの魂が戻ってくるまでの間に、他の神が僕をレオの体に入れたんだ。そしてレオは自分の体を掌握できず、主導権を無くしたんだ。

『どうした相棒、奥義の件で怖気付いているのか? 』

レオが心配そうに聞いてきた。僕は奥義取得からHR終了に至るまで一言も発していない。まぁ、それは別に落ち込んでるわけじゃなくて考え込んでいただけなのだが。

『いや、なんでもないさ。レオの妹が可愛いなって思ってただけだよ』

『おい!!! ソフィアはお前にやらんぞ!!! 』

うん、いつも通りうるさい。妹のことになるとすぐにカッとなるようだ。姉に対してはどうなのだろうか。探ってみよう。

『すまん嘘だ。リーナ姉さんに思いを馳せていた』

『貴様ぁ! ソフィアだけでなくリーナ姉さんにまで手を出そうとしておるのか! そうだ、悪事を働く前に俺が相棒を殺せばいいわけだ』

もう、ほんとに穏やかじゃないなこいつ。僕を殺せば間接的に自分を殺すことになるってのに……レオが重度のシスコンってことは確信に変わった。にしてもこの脳内念話はかなり良いものだ。一人でも全く退屈しない。

そしてこのタイミングで、何故か前世の記憶を完全に思い出した。物忘れってふとした時に思い出すよね。多分それだろう。

『レオ』

『あ? どうした相棒』

『記憶が完全に戻った。僕の名前も勿論思い出した』

『本当か? 聞かせてくれよ、君の名を』

さっきまでの調子はどこへいったのやら。レオはオンとオフの切り替えが早いらしい。

『神崎光助(かんざきこうすけ)だ』

『じゃあこれからは光助と呼ぼう』

そう、完全に記憶を戻したと思っていたんだよ。この時までは。



念話やら考察やらに集中していたせいで気づかなかったが、僕はすでに校庭に出ていた。4月の桜舞う季節。やはり僕はこの季節が一番好きだ。

「ねぇ、お兄ちゃん。私、話があるの」

振り返るとそこにはソフィアが涙目で立っていた。なぜ涙目なのかは見当がつかない。にしても本当にソフィアは美形で"妹"と呼ぶにふさわしい体つきをしていた。そしてさっきから頭の中でうるさい奴が1人。『どうした、ソフィア。なぜ泣いているんだ? お兄ちゃんが聞いてあげるぞ? 』『泣かないでくれよ、俺も泣きたくなるじゃないか』などとほざいている。念話は良いものだといったな、すまないあれは嘘だ。思った以上に精神的にくる。

「ソフィアね、朝はあんなにひどいこと言ったけどお兄ちゃんがいなくなるのは嫌だ。だから死なないでよ」

そういってソフィアは僕に抱きついてきた、校庭の真ん中で……そういや先生が悪ければ1ヶ月も持たないなんてこといってたな。にしても、レオが実はすごく愛されていたってことが伺える。朝には僕のことをボロクソにいっていた凶暴ドロップキック娘がこんなにも可愛いなんてつゆほども思わなかったぜ。

「心配させてごめんな、ソフィア。でも俺は大丈夫。それとさ、ソフィア、入学おめでとう。飛び級した子が一人いるとは聞いてたがソフィアだったとは驚いたぞ」

「お兄ちゃんを驚かそうと思って黙ってたんだ。学校側にも黙ってもらってたし。でもお兄ちゃんは学校に着くや否や女の子の胸しか見ないんだもん。そこは幻滅したわ」

ごめんなレオ。僕は自然と女の子の胸ばっか見てたみたいだ。顔を見るのが恥ずかしいから少し下を、とか思ってたらクラスメイトがソフィアを除いて全員豊満なんだもん。だからソフィアの存在に気づかなかった。

「女の子の胸ばっか見てるくせに私のは一瞥したっきり見てくれないし。お兄ちゃんがどうしようもない巨乳好きってこともわかったよ」

もしもーしソフィアさーん?ここ学校の校庭の真ん中なんですけど?ただでさえ抱きついてきて、みんなが僕たちの方を注目してるのに。明日からどんなとこでも巨乳にしか目がいかない事から、あだ名が変態巨乳スナイパーにでもなってしまう。

「それは気のせいだ、あとソフィアこっちに来てくれ」

そういって僕はソフィアの手を引いて、校門から外へ出た。そして俺はソフィアを安心させるべく誓いの言葉を口にする。

「ここなら安心して話せるな」

「いきなり走ってどうしたのよお兄ちゃん」

「ソフィア、俺は絶対どこにもいかないからな」

「……お兄ちゃんの嘘つき」

そう言ってソフィアは先に家の方へ走っていった。嘘つきと言われる心当たりがないな。

『おい、レオ。前に何かやったんじゃないか』

『いや、何もやってない。四六時中妹を愛でて、姉のことを想ってるだけだ』

うーん、重症。だが、さっきの『嘘つき』には本当に引っかかる。俺がこの体に入ってから1回もソフィアに嘘をついてないからだ。まぁ深くは追求するまい。今日は入学式だったんだのんびりしていこうじゃないか。僕は家へは帰らず町にある商店街に足を運んだ。

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魔術師triple @yousoeki

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