怖い話9【歪み】1000文字以内
雨間一晴
歪み《ゆがみ》
「結婚式、素敵だったよ!また今度集まろうね」
大学の人達のグループメールに参加出来なくなって、もう何年経つだろう。当然その誰かの結婚式にも行けていない。ただメールを確認するだけ、反応はしたくない。
自分の部屋から出るのも難しくなって、ただ気が重い毎日。
「明日の日曜日さ、暇だったら久しぶりに、一緒にご飯でもどうかな?」
一番の親友だった子からのメールだった、何が暇だったらだ。どうせ暇だろうって知っているくせに……
返信もせずに、無性に腹が立って、私は日曜日に親友の後を追いかける事にした。マンションの隣に住んでいるので、家を出たなら音で分かる。
毎週日曜日は決まって彼氏とのデートだ、彼が忙しくて自分が暇だから、反応の無い私以外の誰かに、連絡取って遊ぶに決まっている。
「うん、今向かってるよ。大丈夫、後で迎えに行くよ。きっと来てくれるって」
親友が電話しながら一軒家に入っていった。ここは、確か親友の実家だ。
私は気づかれないように庭に回って、窓から目だけを出すように中の様子を探った。
「なあ、良いじゃねえか、少しだけ」
「だめよ、今日は大事な日になるんだから。終わったら連絡するから、どこかで遊んでて」
彼氏といちゃいちゃしながら、テーブルに何かを置いている。人がこんなに辛い気持ちでいるのに、結局あの男だ……
あいつが居たから、私は親友と遊ぶ事も無くなった、あいつは私にも好きだと言った。愚かな私は、そんな軽い言葉を信じて、まんまと騙され捨てられた。あいつも親友も、相手は別に誰でも良いんだ。ただ一人で居たくないだけなんだ。私には、あなた達しか居なかったのに……
許せない。私は庭にある携帯電話ほどの大きさの石を持って、玄関のチャイムを押した。
「うわ!あれ、どうしてここに?」
呑気な顔で出てきた、あいつの彼氏。側頭部に横殴りに石を突き刺した。こいつがチビでよかった。倒れた頭に何度も石を振り下ろした。ざまあみろ、私と付き合わないからこうなるんだ。
「んー、誰だったのー?」
リビングから声が聞こえて手を止めた。自分が泣いている事に気付いたが、涙を
「え!なんで!待って、明美!話を聞いて!」
血塗れの私を見て慌てる親友を、石で殴って黙らせた。
ふとテーブルの上を見ると、ショートケーキのホールが置いてある。ハッピーバースデー明美と書いてあった。
怖い話9【歪み】1000文字以内 雨間一晴 @AmemaHitoharu
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