第2話 旅路

 そこから、ナータはゼスに手を引かれ、暗い道をひたすら歩いた。


 気がつくと、いつも間にかゼスは居なくて、ゆっくりコロコロ転がっていたんだ。


 やっとたどり着いた草原。


 暖かくて気持ちが良い。


 とてもとても、心地良くて、眠くなったんだ。


 外からは、サーサーと音がするけど、雨でも降っているのだろうか。


 時々、外から声がする。


 優しく語りかける声。


 それを聞いてると、なんだか安心して、ウトウトとまどろんだんだ。


 そのうち周りがだんだん狭くなって、足を伸ばせなくなった。


 時々蹴ってみるけど、広くはならないし、だんだん頭もつかえてくる。


 もっと広いところへ出たいな。


 そう思ったら、クルンと体が逆さまになった。


 これって外に出られのかな?


 でも、怖い!


 まだここで、ぬくぬくしていたい。



 出たい気持ちと、不安な気持ちがせめぎ合う。


 でも、もう止められない。


 きゅうぎゅうと狭い洞窟に押しこまれる。


 やだよ。


 こわいよ。


 でも頑張ってここから出なきゃいけないんだって事は知ってる。


 ゼスから聞いていたから。


 不意に明るくなった。


 やっと出られた!


 ボクは、大きな声で泣いたんだ。


 怖かったし、頑張ったから、泣いたんだ。


 そして何より安心したから。


 ボクを抱いてくれた人が“お母さん”?


 今まで温かく守ってくれてありがとう。


 そして、これからも宜しくね。


 こうして、ボクの人生は始まったんだ。

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ボクの旅路 とまと @natutomato

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