四、自分に誓う決意
負傷者は部屋に運ばれて手当を施し、一同は落ち着きを取り戻した。
ゴーシュの運ばれた部屋にはアンナと狼カテナ、パンドラ、そしてヴェヌス楽団の同僚代表として、例の気さくなヴァイオリン奏者ハーメル氏。
カテナは久しぶりの狼化を満喫するために、しばらくそのままの姿のまま、ゴーシュの近くにいるアンナの傍らに座っている。
アンナは初めて大型犬と接した子供のように少しびくびくしながらも、パンドラに倣ってそっと撫でてみたりしている。
アンナに撫でられると、そっと目をつぶる狼カテナ。「ふっ……」と言っているような感じの顔だ。
一方、学院生のグリム青年が運ばれた隣の部屋には、ドルジ、クルト、アイシャ、そしてゼバストゥス。
双方落ち着きを取り戻し、ベッドで手当を受けつつ事の子細を話し出した。
──真相解明──
【プラーガ中央魔法学院研究生・グリム】
「アイシャ君か……見事な魔法推理だったよ、合格だ──」
○経緯・動機
優等生な反面自尊心が強く、そして魔法学を研究するうちに悪魔の類に憧れを持っていった彼。
そこに例のヴァルトベルクの音楽祭が。彼はこれだと思った。城の亡霊伝説の真実を解明してみせる、と。そしてマースハルト楽団の用心棒の求人に志願。
同業者がいる分にはむしろ好都合と考え、腕利きの集まる「賢者の館」に求人情報を吹き込み。ただ、顔が割れていると何かと気まずいので、仕事時は常時
マースハルト楽団の胡散臭い執事達と、ライバル潰しの裏工作という汚い仕事に正直マズったと思いつつも、ここで退いては元も子もない。亡霊騒ぎが広まる分には、探査に乗り出す猛者や、ゴーシュみたいにやられに行く阿呆も出てくれば、実験台になって好都合なので、当面は協力。
そして、微妙に知人にして同業者のいるアンスバッハ楽団へ遂に攻撃指令が。
眼中外だと思っていたゼバスの人気が急上昇してマースハルト楽団の矛先が向くのは正直予想外。出来れば避けて通りたかったが、有名なドルジ一行を亡霊探査に仕向けることが出来ればまぁいいかと思って承諾。
夜の似非亡霊計画は人に見せてびびらせる必要があるので、警戒の注意を引くため、そしてニューフェイスであるパンドラの力量を見計らうため、火炎瓶を計画。
同僚のシーフが建物の上から瓶を投下、物陰から増幅の指輪を使って遠距離
そして夜に……。
ゼバス「オルガンの上にこんなものが置いてあったが、君のかい?」
グリム「いえ……城の古い蔵から拾ってきた本です」
鍵盤の上に乗って不協和音を鳴らしていたのは、古びた分厚いファウストの作品集だった。
○似非亡霊騒ぎのトリック全解明
・自分の
杖に掛けた
ダークエルフなら
どーよこの完璧すぎる隠れ蓑!? と本人(+ゲームマスター)は誇りたい。
・
・
・
ゼバス「それと、あのオルガンは私の演奏だね?」
グリム「ええ、流石にお気づきですか。本当に申し訳ないことを……実はファンなんです」
闇夜に忽然と鳴り響いたオルガンの音は、練習に潜入して
・
・オルガンの鍵盤に本を載せて不協和音を鳴らし、その隙に奏者台からジャンプ。先ほど掛けておいた
・
・幻影ファウストを囮にして、
・ゴール寸前、成功を確信したところで本物のゴーシュお化けとハチ合わせ。
「まさか本物が来るとは、完全に誤算だったよ……僕のトリックは完璧だった筈なんだ」
P.S.「あぁ、マースハルト楽団の賄賂の噂かい? それは本当だよ。ただ、一部の悪徳な執事達の仕業さ。楽団員は直接関係ない人達も多いし、マースハルトさん本人が全て知ってるのかどうかは分からないね。あと、僕の他にもシーフが数人用心棒に雇われてる」
【ヴェヌス楽団若手チェロ奏者・ゴーシュ】
今回の仕事は、自由な気質がある同楽団に才を買われての大抜擢、一世一代の大舞台だった。相棒ハーメル氏の口利きもある。
日に日に募る不安。プレッシャーがプレッシャーを呼び、真綿の首枷ように自らの首を絞める。
そんな彼がふと耳にしたファウストの伝説は、まさに悪魔の誘惑だった。
──真に才ある者には芸の加護を──
ある日、意を決して夜中の城へ──そのあとの記憶はおぼろげだが、思い出したくもない。
以下はドルジの推理。
城から救出された時には、取り巻きの亡霊に憑かれていた。それは気配を抑えて潜伏していたが、ゴーシュの心の闇を糧に急成長、ついには依り代を乗っ取ってグリムの似非亡霊事件に介入。
「みんな、本当に済まない……僕は不安で仕方なかったんだ──」
──真相解明・以上──
パンドラ「全くあんたは運が良いよ。あたしの『炎の剣』を最前席で見れたんだからねぇ」
正気の戻ったゴーシュの目の前で剣を腰に戻し、振り返って歩いていくパンドラ。
アンナ「パンドラさん、肩から血が……」
パンドラ「こんな傷は慣れっこさ。さぁ、休もう。みんな疲れただろ」
その後、軽く手当を受けて、部屋の中で落ち着く。椅子に足を組みながら座り、赤ワインを飲みながら一同を見ている。
グリム「ふふ……これで僕は、もはや学院どころか日の当たるところにも当分帰れませんね」
青年は最後に、哀しげな自嘲の微笑みを浮かべて言った。
ドルジ「なにを案ずるのだね? 教会に現れた亡霊を、マースハルト楽団の勇敢な魔術士が命を懸けて撃退した──遂に関係者が襲われたとあっては、同楽団が亡霊騒ぎの仕掛け人という疑いも晴れるじゃろう。まぁ、その“紳士”は再起困難の重傷とあっては、惜しまれながらも用心棒は解雇じゃろうがの」
グリム「…………!!」
ドルジ「さらには、悪徳な楽団執事と審査員の贈収賄について、匿名の曝露通報なんぞがあると面白いの。──どうじゃね、一つ取引せんか? おぬしが望むなら、わしらが城の研究探査を手伝おうぞ。のう、諸君は異論あるかの?」
ふるふると首を横に振るクルト、無言で斜め上に目をやって答えるアイシャとゼバス。
ゼバス「ともかく今夜は泊まっていきなさい。ゆっくり休まれたのち、病院へ行きましょう」
ドルジ「昼頃まで休めば、“紳士”の“身支度”は自分で出来るじゃろの?」
グリム「っっ……本当に申し訳ありませんっ──」
一方、外傷の少ないゴーシュは、アンナとゼバスに見送られ、ハーメル氏に肩を抱えられて帰途についた。
ゴーシュ「僕の夢は潰えたのかな……」
アンナ「ゴーシュさん、そんな……っ」
ゴーシュ「でも、今はもう一度弦を握ってみたいと思う……子供の頃のように無心のままで」
ゼバス「──ゴーシュ君、調子が良くなったら、明日にでも一度我々の練習を見にくるといい。ハーメルさん、そしてお仲間もぜひご一緒に」
ゴーシュ「ええ、きっと……」
一通りののち、一同は双方の部屋での話を交換しあった。
ドルジ「ともあれ、ヴァルトベルク城の亡霊伝説は真実じゃったわけじゃな。当日まで城の立ち入り警備を厳しくするように言っておこう」
ドルジは窓の雨戸を開けると、月明かりの差す小山の上に、町を見下ろしてそびえ立つ古城を仰ぎ見た。
ドルジ(不穏の種は消えておらぬ……音楽祭の当日まで、何事もなければよいが──)
「うおぉーー…ん……」
どこからともなく、夜闇に遠吠えが鳴り響く。
ゴーシュが帰ったのち外に出たカテナも、どこかで古城を眺めているのだろうか……。
翌日。最低限の
本番まで一週間足らず。アンスバッハ楽団の一同は、午後にはいつも通りの練習に復帰した。
今日は、ゴーシュやハーメルらヴェヌス楽団の人々が観客として訪れていた。
すっかり練習の楽しみに浸った冒険者達は、今日も各々の特技を発揮して愉快に立ち回っている。
ゴーシュ(こんなに楽しそうに歌い、踊り、奏でている──)
時折カテナが出番を間違えて、シリアスシーンがお笑いと化したりするのもご愛敬。一同の表情には、笑いと活気が満ち溢れていた。
ゼバス「ゴーシュ君、久々に私と一緒に弾いてみないかね? 教会備品のおんぼろ楽器で悪いが」
一幕の合間、感動と爆笑の余韻に浸る観衆の裏で、古びたチェロを持ってゴーシュを誘うゼバス。
ゴーシュ「……はい!」
力強い笑顔を取り戻して弓を受け取るゴーシュ。ゼバスとはかつて学生時代に師弟だったそうだ。
ハーメル「お邪魔じゃなければ、オレ達もぜひ……!」
ヴェヌス楽団有志が加わって、いつになく充実した伴奏が奏でられる。その演奏は、初めての共演とは思えないほど息が合っていた。
ふやけて調子の外れていた楽器のはずなのに、ゴーシュらの手元で不思議なほど心地よい旋律を響かせている。
ドルジ「ほっほ。伴奏が美しいと、わしらも乗ってくるのう」
ハーメル「実はゴーシュの持っていた楽譜で、よく貴方の曲を練習していたんですよ、アンスバッハ先生!」
ゼバス「素晴らしい、この調子なら今からでも間に合います──皆さん、ぜひ我々に加わっていただけませんか?」
ゴーシュ「先生……僕達に再起のチャンスを与えて下さるんですか!?」
ハーメル「我々でお役に立てるのなら、付け焼き刃ででも特訓しますよ……!」
かくしてゼバス一座は、ゴーシュらヴェヌス楽団の残党を確保した。
一方、パンドラは夜の酒場で踊っていた。
客1「ひゅーひゅー♪ いいぞ姐さん!」
客2「もっと近くに寄って来てくれぇ!」
ゆったりとしたテンポの良い舞が終わった。パンドラは客席に一礼をすると舞台裏へと歩いていった。そこに店長らしき男がタオルを持って歩いて来た。パンドラは男からタオルを受け取り、汗を拭いた。
店長「ありがとうパンドラさん。今夜も良い盛り上がりだったよ。これは今日の稼ぎの分だ」
店長はパンドラに数枚の銀貨を渡した。
パンドラ「ありがとよ」
店長「ところでどうだい。もうすぐ店を閉めるから、その後に夜食でも?」
パンドラ「気持ちだけ受け取っておくよ。もう戻らなきゃいけないんだ」
店長「そうか……まっ、また頼むよ」
舞台裏から出口の扉を開けて、夜の古城を眺めながら、仲間達の所へと歩いた。
客1「それにしても今日の踊りは何か悲しいもんだったな」
客2「確かに。パンドラさんの表情も悲しげだったし」
紳士「あれは『
艶やかな黒いロングコートの袖を口元まで立てた若い紳士が、ワイングラスを片手に口を開く。
客1「へぇ、にいちゃん詳しいねぇ」
客2「でもパンドラさんが踊れば、何でも格好良く見えるぜ」
客1「ちげえねぇ。ははははは!」
満員の店内は客達の笑い声で賑わう。紳士は席から立ち上がると、銀貨を置いて店を後にした。
客1「しかしあの男はなんだ?」
客2「あぁ、酒場に来る格好じゃねぇよな。貴族ぶってるぜ、あの服装はよぉ」
満月の輝きに照らされた下町を歩く男。広場には白馬を二頭備えた馬車が停まっていた。男は馬車に乗り込むと、馬車は動き出した。
紳士「(素晴らしい舞だったよパンドラ君。さすがは『炎の竜姫』と呼ばれるだけはある。おそらく君の仲間達も、君に劣らない素晴らしい楽士なのだろう。だが、私も『神童』と謳われたほどだ。いつか君達と音楽を奏でられる気がする。今少し、私は頂点に君臨して君達を待っていよう)──ふふふ」
御者「いかがなされましたか?」
紳士「いや、今日は面白いモノが見れたからな。気分が良かったのだよ」
石畳の上を馬の蹄が奏でる音が美しい。馬車は夜の闇へと消えていった。
練習が終わった修道館の広間で、ヴェヌス楽団も加わった一同は歓迎会とゴーシュの快気祝いも兼ねて、賑やかに夕食の席を囲んでいた。
カテナ「なんかにぎやかになってたのしいなぁ! ね、アンナ! ゴーシュもげんきになったみたいだし!」
アンナ「えっ? あ、はいっ、そうですね……」
深刻そうに何か考え込むような表情をしていたアンナ。カテナが声を掛けたのに対して、はっと我に返ったように答え、ややつたない微笑みも束の間、再び表情を濁らせる。本番が近づいて緊張が溜まっているのか、昨日の事件の前後から、どうも落ち着きがなくなっているように思える。それは、ゴーシュが正気を取り戻した今も変わっていない。
カテナ「アンナ? どーしたの……げんきないよ? まだ、ファウストってヤツがきになるの?」
心配そうに顔を覗き込むカテナ。
アンナ「いえ、ごめんなさい……もう平気ですよ♪」
心配そうなカテナに対し、えへへ、と取り繕うように笑顔を見せるが、そんな様子はその後もことあるごとに続いた。
晩餐を終え子供達も床に就いた宵の口、暖炉の間で大人達がくつろいでいるところに、酒場へ行っていたパンドラが戻ってきた。
パンドラ「ただいまぁ~! っと、だいぶ賑やかになってるわねぇ」
ゼバス「仕事は終わりましたかな?」
パンドラ「ええ、終わったわ。すまないね、歓迎会をさぼっちゃって。どうも仕事がさぼれなくてさぁ」
ゼバス「いえ、そもそもヴェヌス楽団が加わってくれたのは、パンドラさん達のお陰ですから。感謝しています」
パンドラ「ふふ、こちらこそありがとよ。今日の新聞はどうだったかい?」
アイシャ「あ、どうぞ。もう読み終わりましたので」
夕刊には、「聖ルダー教会に亡霊出没」「マースハルト楽団の顧問魔術士、命を懸けた撃退」「同楽団執事長の声明:わが楽団関係者の活躍を名誉に思う一方、彼の容態を憂慮する。一日も早い快復を望む」などの記事が紙面を賑わせた。
翌朝。焼きたてパンを持ってきたパン屋の主人が、パンドラ達を見ると嬉々として話し掛ける。
パン屋「昨夜マリア病院に泥棒が入ったそうです! 直前の匿名通報で犯人は逮捕されたんですが、それがなんとマースハルト楽団の関係者らしいんですよ! しかし、入院していた例の魔術士は行方不明になったそうですがね……不可解な事件が続くもんですなーHaHaHa-」
クルト「グリムさん大丈夫かな……」
アイシャに小声で話し掛ける。
ドルジ「成程、うまくやったようじゃな。ほれ」
郵便受けから戻ってきて手紙を渡すドルジ。切手と消印のないその手紙には、「ドルジ様、皆様。こちらはお陰様で好調です。昨夜、“お見舞い”が来る前に“退院”してしまいました。これから“着替え”て新聞屋に行きます。魔術士G」とあった。
その日の夕刊には、「匿名曝露! マースハルト楽団贈賄疑惑 汚れた執事団と審査員」とスクープ記事が大々的に載った。警察当局も重い腰を上げて捜査に乗り出したようだ。その脇には、「病院侵入犯毒物所持、暗殺目的か」「入院魔術士失踪、身分証は偽造か」などとの記事もあった。
そうするうちに、いよいよ本番前日を迎えた。
町の広場やあちこちの酒場は、既にお祭りムードに包まれていた。今夜には市庁舎で前夜祭が始まる。それに合わせて、皇帝の勅使をはじめ各国の使節や王侯貴族も集まってきた。彼らの豪奢な馬車や観戦ツアー客を乗せた大型馬車などが、町の通りや中央広場にひしめいている。
あれ以来亡霊騒ぎもなくなり、参加者達は各々最後の追い込みに励んでいた。マースハルト楽団の悪徳執事や収賄の審査員は処分され、一時はスキャンダルとなったものの、マースハルト自身は無関与とされたことと、元来の並はずれた人気のため、すぐに悪評は声援に埋没した。
ゴーシュら途中参加者は、わずかな練習期間で驚くべき完成度を見せ、アンスバッハ楽団は十二分に臨戦態勢を整えた。巷ではマースハルト楽団との優勝一騎打ちかと噂されるまでになっていた。
パンドラ達に加えてゴーシュらヴェヌス楽団有志も加わって一大楽団となったアンスバッハ楽団は、完璧といっていい仕上がりと熱い声援のうちにリハーサルを終えた。
アンナは昨夜から寝る間も惜しんで、聖堂に祈りを捧げている。
アンナ「神様……どうか、どうか父とその同胞に祝福を……!」
ゼバス「私達は精一杯頑張ってきた、あとは天命を待つのみだ。結果がどうであれ悔いはないさ」
アンナ「そんな……明日のことを思うと、私いてもたってもいられないわ!」
ゴーシュ「大丈夫、先生やパンドラさん達、それに僕達が、きっと優勝を手に入れてみせるよ! 信じてくれないかい?」
アンナ「え、ええ……私、応援してますから……っ! ああ神様、どうか祝福を!」
ゴーシュらが不安を解こうと声を掛けても、アンナの不安と緊張は止まらなかった。
夜は、楽団の一同が集まって決起パーティーが行われた。
カテナ「よーっし! あしたはぜーったいかつぞー! オイラのためにも、みんなのためにも、もちろん、アンナのためにもだ!」
ドルジ「そうじゃの、ここまで頑張ったからには目指すは優勝じゃぞ!」
張り切るカテナに対して微笑んで答えるドルジ。だが、なおも不安そうなアンナの姿を見て、やや深刻そうに顎鬚を撫でた。
ドルジ「…………」(自らを追いつめる過度の不安と揺らぐ心──これはまるで……)
アンナの祈りは、団員達が寝静まった夜更けまで続いていた。
ギィィィ~
年季の入った聖堂の扉を開けて入ってきたのはパンドラであった。
アンナ「パンドラさん。パンドラさんも眠れないんですか?」
パンドラ「目が覚めちまってね。ずっと祈ってたのかい?」
アンナ「は、はい……パンドラさんもここに祈りに?」
パンドラ「ふふ、あたしは神様なんかに祈ったことは一度もないさ。相性が悪いのさ、神様ってのとね」
アンナ「神様と、相性が悪い……ですか?」
パンドラ「昔、神様に祈り続けた牧師がいたんだ。でもそいつは最後に、女、子供ごと町一つを丸焼きにしちまいやがった。神様なんて自分が描く理想像。ムシがよすぎるってものよ。だから私はそんなモノに頼るより、自分の力を信じるわね」
パンドラはアンナの両手を握った。
パンドラ「祈りとは、できそうもないことを願う心ではない。必ず実現させると自分に誓う決意。それを忘れないで」
アンナ「は、はい!」
パンドラ「でも祈るのもほどほどにね。祈れば手がふさがる。手がふさがれれば、できることもできなくなっちまうよ」
パンドラはアンナを軽く抱きしめると、聖堂を後にした。
パンドラ「ふぁ~あ。眠くなってきたよ。アンナも少しぐらい休みなよ。んじゃ、おやすみ」
アンナ「自分に誓う、決意……」
パンドラの去っていった戸口を見つめ、彼女の言葉を噛みしめるように呟くアンナ。その瞳には、戦いに臨む者と同じ固い決意があった。
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